ビッグマイナーチェンジ後のアクアの乗り味は?
2017年6月19日にボディ補強、外観の変更等の大規模なマイナーチェンジを受けたアクアを試乗してまいりました。
グレードは G となります。
車両本体価格は約206万円となりますが、他社の同クラス(Bセグメント)のフルハイブリッド車と同様の装備(最廉価のナビ、ETC等)で比較すると、
スイフトハイブリッドSL は約210万円、アクアは約235万円、ノート e-POWER と フィットハイブリッド は約250万円となりますので、このクラスではスイフトの安さが際立っています。
ちなみに、アクアの初期型にはチョイ乗りしたことがあるのですが、
「あぁ…いつものダメトヨタ車か…」と感じた記憶があります。
リニアに反応しないハンドリング、全く剛性感が感じられないペナペナのボディ、バタンバタンと低級な乗り心地、意図したとおりに加速してくれないハイブリッドシステムなどなど、トヨタ車の暗黒時代の代名詞のような乗り味と感じられました。
ですが、豊田章男体勢になってからのトヨタは、明らかにクルマの本質的な良さを追求するようになってきています。
テストドライバー、レーシングドライバーとしての経験を積まれた豊田社長の意向、知見が明らかにクルマ造りに反映されてきているのではないでしょうか?
故に、今回のビッグマイナーチェンジを受けたアクアには興味をそそられました。
果たしてビッグマイナーチェンジを受けたアクアは、完成度の高い フィットハイブリッド や スイフトハイブリッドSL と肩を並べるほどの乗り味となっていたのか?
歯に衣着せず論評させていただきます。
外観デザイン
評価:★★
前期型のデザインは、なんら琴線に響かない凡庸なものだったと思います。
現行カローラの後期型ほどの醜さはありませんが、国産コンパクトカーの中では、かなりレベルの低いデザインと僕には感じられました。
(あくまで僕の主観ですのでご容赦ください)
初見では「車体寸法の割にえらく貧相に見えるなぁ」と思いました。
特にリアビューは貧相に感じられます。
フロントフェイスは、余計なラインやギミックでごまかしただけの無難なものですし、リアのコンビネーションランプのデメキンのようなデザインと、それに繋がるリアフェンダーの意味不明な盛り上がり、面構成に何のこだわりも感じられない抑揚のないプレスラインなどなど。
カッコよさ、美しさ、オシャレさ、塊感、流麗さ…
僕の感性には、何ひとつ訴えかけてくるものがありませんでした。
空力特性を重視したプロポーションありきで、いろいろなデザイン上のギミックを適当に組み合わせただけで、クルマ全体の統一感、アイデンティティが全く感じられませんでした。
当時のトヨタはデザイン面でも暗黒時代であったと思います。
ですが、今回のマイナーチェンジで、かなりマシになったと思います。
各部のデザインをシンプルかつクリーンなものに改めた事で、なんとなく全体の統一感まで感じられるようになっています。
カッコイイとまでは言えませんし、まだまだ僕の感性に響くものではありませんが、これならば悪くないかと思います。
僕の評価では前期型は星1つですが、後期型も星2つがせいぜいです。
このクルマのデザインの手直しを任されたデザイナーさんは大変だったことでしょう。
プレスの金型まで変えるわけにはいきませんのでね。
フロントフェイスは、かなりスッキリとして以前のごちゃごちゃした感じは無くなりました。
ですが、このフロント周りのデザインは、ちょっとフォードフィエスタに似すぎじゃないでしょうかね?
他人の空似ですか?
空力特性を重視するあまりでしょうが、Aピラーが寝すぎています。
そのため、サイドビューはノーズが長く見えて、アンバランスな感じがしてしまいます。
また、あまりに単調なプレスラインのため、このクルマをどう見せたいのか、何を表現したいのかが全く見えてきません。
きっと何も考えずに、ただただ無難にデザインしたのでしょう。
その証拠に、フロントとリアのドアノブの位置関係をご覧下さい。
明らかにリアのドアノブの位置が上にあり過ぎて不自然です。
これは何も考えていないというよりも、このクルマのデザインに賭ける情熱が欠乏している証拠です。
前期型と比べるとリアビューもすっきりとしましたが、もともとの面構成が単調なのでモディファイにも限界があります。
この角度から見ると、ボディサイドのプレスラインは恐ろしく平板です。
リアバンパーの高さ不足、後方投影面積の小ささが貧相に見える原因でしょう。
内装
評価:★★★
前期型の内装はインパネの樹脂に安っぽいプラスティック感が感じられ、使い勝手は悪くないもののデザインも稚拙で、イイもの感、上質感は感じられませんでした。
前期型は星2つといったところです。
ですが、今回ひさびさにアクアに乗り込んでみて、「ほぉー、なかなか上質になったな」と感じられました。
インパネの樹脂の質感が向上してますし、メッキパーツの使い方も、控えめでありながら上質感をうまく演出しています。
これより安い スイフトハイブリッドSL の質感には及びませんので、星3つとさせていただきますが、根本的なデザイン変更が出来ないなかでは非常に頑張っているのではないでしょうか。
シフトレバー根元の部分の質感の低さが気になりますが、前期型に比べると全体的に上質になりました。
ところどころ安っぽく感じられるところはありますが、これならば許せるレベルです。
ステアリングホイールも上質とまでは申せませんが、しっくりと手に馴染むものです。
インパネセンターの使い勝手は、もともと良好でしたが、見た目の質感は大幅に向上しています。
ですが、各部スイッチ類のクリック感に デミオ や スイフト で感じられた高級感は感じられませんでした。
前期型と比べると、いい意味で普通になってます。
居住性、ユーティリティー
評価:★★★
フィットハイブリッド ほどではありませんが、実用性は良好です。
この居住空間、トランクスペースで不足を感じるシチュエーションは、ほぼ無いと言ってもいいでしょう。
デミオ や スイフト よりも余裕が感じられます。
ですが、空力特性を重視するあまり、外寸の割には車内空間は狭いとも言えます。
もう少しAピラーを立てて、パッケージングを優先したほうが良かったのではないでしょうか。
短時間の試乗でしたが、フロントシートの掛け心地は、硬すぎず、柔らかすぎずで良好であったように思います。
身長175cmの僕がドライビングポジションを調整した状態で、後席の足元は充分な余裕があります。
トランクスペースも予想以上に広いものでした。
サスペンションアッパーの出っ張りは、もう少し抑えたいところです。
これならば、フル乗車で旅行なども苦も無くこなせましょう。
走りの評価 (エンジンとミッション)
評価:★★
1090kgの車重に対して、1.5Lアトキンソンサイクルエンジン+モーターのハイブリッドシステムの合計出力は100psとなります。
ですが、体感的には1200kgの車重に対して105psの 自家用シビック よりも明確に遅いです。
加速タイムはほぼ一緒でしょうが、アクアのほうがエンジンの回転数上昇に伴う高揚感が感じられないぶん遅く感じられるのでしょうね。
他社のBセグメントのハイブリッド車との比較では、スイフトハイブリッドSL、ノート e-POWER、フィットハイブリッド の3車よりも明確に遅く感じられます。
加速フィーリングも、初期のTHSⅡよりも自然なフィーリングにはなってきましたが、上記3車と比べると、ダイレクト感や、意図したとおりのリニアな加速感といった面では明確に劣ります。
ですが実用燃費の面では フィットハイブリッド と並んで、あらゆるシチュエーションで最も効率がいいものでしょう。
ドライビングプレジャーの面では スイフトハイブリッドSL 、フィットハイブリッド には遠く及びません。
気持ちのいい加速感や高揚感は、かなり希薄です。
1.5Lアトキンソンサイクルエンジンも、以前のようなガサツな回転フィールや音はかなり抑えられてマイルドになっていますが、音質自体は「ガー」という安っぽいものです。
エンジンを回す楽しみは皆無と言っていいでしょう。
燃費のいい実用車を求めておられる方には悪くない選択肢ですが、運転好きの方がドライビングの楽しさを求めて購入されますと、深く失望されますのでご注意ください。
走りの評価 (足まわりとボディ)
評価:★★
前期型よりも、かなり上質にはなっています。
ハンドリングもリニアですし、サスペンションの接地感も充分感じられます。
段差のいなしも上質なものになっています。
ボディの補強が功を奏しているのでしょう、クルマ全体の一体感もかなり感じられるようになりました。
少なくとも路面状態のいい道路においては、ノート e-POWER よりも快適な乗り味です。
余談になりますが、自家用のトゥインゴ の車検の時に、代車でノートのノーマルグレードを3日間ほどお借りして、いろんなシチュエーションで乗り回してみましたが、僕的にはかなりウンザリしました。
恐らくシャシー剛性が不足しているのでしょう、あたりは柔らかいのですが、低速域でも高速域でも常に細かいピッチングが感じられ、かなり不快な乗り味でした。
個人的には二度と運転したくないクルマです。
ノート e-POWER もノーマルグレードと基本的な乗り味は同じで、それと比べると、マイチェン後のアクアのほうが上質かつ快適です。
ただし、アクアは大きな段差に遭遇した時にうまくいなしきれません。
「バタン、ドタン」と商用車のような、低級な突き上げが明確に感じられます。
大きな段差でも、何事もなかったかのように軽やかにいなす スイフトハイブリッドSL 、フィットハイブリッド に比べると、あきらかに安っぽく低級な乗り味です。
これは、あまりドライビングに興味のない方でも、ハッキリと認識できるほどの違いです。
やはり、いかにボディ補強を施したところで、出来の悪いシャシーの能力不足を補う事は出来なかったのでしょう。
ですが、今回の改良の方向性から察するに、来年の2018年末に登場予定の次期アクアには大いに期待出来そうです。
新たにプラットフォームが、Bセグメント用のTNGAに全面刷新されることで、現行アクアとは次元の違う、欧州の小型車に匹敵するほどの出来栄えになるのではないかと予想しています。
試乗動画の後半を是非ご覧ください。
大きな段差をいなし切れていないのが分かるかと思います。
僕のYouTubeチャンネル も、閲覧&チャンネル登録して頂けましたら幸いです。
総合評価
評価:★★
アクア単独で見ると、充分な実用性がありますし、燃費もトップクラスです。
良路においては乗り味も上質ですので、決して悪いクルマではありません。
ですが、同クラスに スイフトハイブリッドSL 、フィットハイブリッド という、欧州の小型車に匹敵するか上回るほどの傑作車が存在する以上、あえてアクアを選ぶだけの理由が見つかりません。
Bセグメントのフルハイブリッド車をご検討中の方は、是非 スイフトハイブリッドSL 、フィットハイブリッド の両車も比較試乗されることを強くオススメいたします。
「どうしてもトヨタでないと」という方は、次期アクアを待たれたほうが賢明でしょう。
恐らく、次期アクアは相当にレベルが高いクルマとなるはずです。
コメント
コメント一覧 (6件)
やまねこさん、こんにちは。
私はアクアに運転した事はないのですが(興味も無かったので試乗しようとも思いませんでした)、フルTNGAになった新型カムリを試乗しました。カムリがトヨタのハイブリッドを運転するのが初めてです。サイズの割には室内がタイトに感じられました。(決して狭い訳では無く適度なタイト感で運転する気にさせてくれるので好印象です)旧型比50mmほど全高ダウンさせて低重心とスポーティーなデザインを実現しているそうです。また、全幅が1840mmもあるのにも関わらず前方とサイドの視界が良く幅の感覚がつかみやすく、思ったより取り回しがしやすいです。
トヨタのハイブリッドは運転が楽しくないイメージがあるのですが、アクアとは単純に比較は出来ないのですが、快適で運転してもそんなに退屈しないような感じでした。
次期型ではフルTNGAになると思われるアクアにも期待しています。
あ さん、こんにちは!
僕もフルTNGAになった新型カムリには興味があったのですが、なかなかタイミングを逃してしまって未だに試乗できていませんので、あ さんのインプレッションは非常に参考になります。
ありがとうございます。
やはり、新世代のトヨタ車は走りの部分の出来はかなり良くなっているようですね。
現行アクアは凡庸な出来と感じられましたが、フルTNGAとなる次期アクアは非常に期待できそうですね。
楽しみです。
やまねこさん、こんにちは。
歴代のカムリは「おじさん」車のイメージで、装備は豪華だけど大衆車臭い中途半端な印象がありましたが、新型は車高が低くなってセダンらしい高級感とスポーティーを合わせ持ったデザインに生まれ変わったと思います。ディーラーによると、若年層の購入が増えているようです。
私が試乗したのは「G」グレード(349万9200円)高級ハイブリッドセダンでこの価格はお安いのではないでしょうか?流石にクラウンほど豪華ではありませんが、ステイタス性がそれなりに高く、購入しても決して後悔する事は無いと思います。
私では参考にならないとは思いますが、私が試乗した感じでは欠点らしい欠点は見つかりませんでした。やまねこさんも是非試乗して辛口コメントをお聞かせください(笑)。
あ さん、こんにちは。
いえいえ、僕が試乗したらたぶん絶賛記事になると思います。
TNGAの素晴らしさはC-HRで体感していますので。
新型カムリはC-HRよりもさらに進化しているハズですので、おそらく素晴らしいクルマだと思います。
早くBセグメント以下の小型車もあのクオリティの走りに高めてもらいたいですねぇ。
現状のBセグメント用のプラットフォームはリーマンショック後の負の遺産で、いかにモディファイしてもクオリティの高い走りが実現できないことは、豊田章男社長自身が一番分かっておられるはずです。
やまねこさん。こんにちは。
プラドの代車でアクアに一月乗りました。
やまねこさんのおっしゃられることに本当に同感です。
基本設計の古さなのか、セミトレのリアサスのせいなのか、乗り心地は軽を上質にした感じで、昔のアルファードとかを思い出します。
長距離走ると疲れますね。
ただ、中期型と比べるととても良く曲がる車になっているせいか山道はそれなりに楽しかったです。
以前、中期型アクアも代車でお借りしましたが山道は曲がらないしパワーも無いし燃費も16とかでがっかりした記憶がありますが、後期型は同じ山道同じペースで走っても22くらい走りました。
明らかに燃費が良くなっている気がします。
脚回りがよくなっていてコーナー前での減速が減っているのかもしれません。
一般道を普通に走っても25は走るし、その点は満足でした。
田舎道を時速50~60キロで走ると、リッター40キロを目指せるのも楽しかったです。
一番素晴らしいなと思ったのは、時速60キロ以上のペースで走るとエンジンがほぼかかりっぱなしになってしまうので、燃費を意識してとばさなくなったことですね(笑)
ホントはもう少し上の速度域までモーター走行ができればいいなって思いましたが。
高速燃費がそれほどでもないし乗り心地も良くないし、そして一番不満だったのはコンパクトカーなのに見切りが悪すぎるところでした。
本当に狭い道で、斜度変化がある道だと路面が全く見えないなか手探りで走ることになります。
着座位置が低くてサイドのラインが高く、さらにAピラーが寝過ぎていて全く回りが見えません。
この道は行けないと判断できるだけプラドのほうがまだ狭い道走りやすいです(笑)
そんな欠点もありますが、ただただ燃費スペシャルとして神経すり減らしながらリッター40を目指すドライブが楽しめる車としてとても楽しかったです。
それ故か、一月で3000キロ弱も走ってしまいました。
あの緊張感がある燃費走行はある意味癖になりますね(笑)
あしだか さん、はじめまして。
コメント頂いてありがとうございます。
プラドにお乗りなんですね。
プラドやパジェロなども、違った意味での走りの楽しさがありますよね。
未舗装路もガンガン突っ込んでいけるのは非常に魅力的です。
アクアは前期型と比べると、別のクルマと言ってもいいほどにボディ剛性が向上していたように感じられました。
サスペンションもしなやかさが増しているにも関わらず、コーナーでも腰砕けにならないのはなかなかのものです。
ただ、記事でも指摘させていただきましたが、基本的なシャシー剛性の低さはモディファイのしようもないようで、大きな段差でガサツな突き上げがあるのが最大の欠点です。
他メーカーの新世代シャシー採用車と比較すると、その点で明確に見劣りしてしまいますね。
仰られるように、「燃費スペシャル」として考えると秀逸なクルマかもしれません。
実際に公道で後続車が詰まっていても、頑なにスピードを上げないアクアが多いような気がするのはそういった事情があったんですね(笑)
次期アクアは80kmくらいまでモーター走行できるようにして頂きたいものです。