【新車試乗】ホンダ 2020新型N-ONE 走り、価格、内装を実走インプレッション

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「売れなくていい」では売れません。

8年ぶりのフルモデルチェンジとなった、新型N-ONEのベーシックグレードを試乗してきました。
グレードはOriginalのFFです。
価格は税込み1,599,400円となります。
けっこうお高いですね。

初代N-ONEが発売されたのが2012年で、直近では売り上げも低迷していましたので、巷ではモデル廃止されるのではないか?ともささやかれていましたが、フルモデルチェンジされて2020年11月20日に発売されました。

現在の軽自動車はN-BOX、タント、スペーシアなどのスーパーハイトワゴンが市場を席巻しており、少し前まではそこそこ売れていたワゴンRやムーヴ、N-WGNなどのハイトワゴンの市場ですら縮小傾向です。
そのような状況下でのN-ONEのモデルチェンジは相当に難しいものであったと思いますが、出来上がったクルマを見てみると、苦心の末に生み出したというような苦労の跡が全く感じられませんでした。

ボディ外板は先代の使いまわしでバンパーの形状が変わった程度、走りは確かに良くなっていますがシャシー、パワートレイン、ミッションはN-BOXやN-WGNと同じもの。
今回は6速マニュアルが設定されたのが注目されていますが、これとてS660やN-VANに搭載されていなければ設定はなかったことでしょう。

さらには、主な競合のラパンと比べると大幅に割高な価格設定となっています。
RSグレードに至っては、スイフトスポーツとあまり価格が変わりません。
他車よりも高級な「プレミアム軽自動車」という位置づけを狙っているのはわかりますが、これで売れますか?
僕は無理だと思います。

今回の新型N-ONEは、
「どうせ台数を稼げないなら利益率を上げたい」
という思惑が見え隠れして、個人的にはオススメ出来ないクルマです。
きっと現場の営業マンも頭を抱えてるんじゃないでしょうか。

外観デザイン

評価:★★

もともとN-ONEは塊感、凝縮感が感じられて、実際の寸法よりもさらにコンパクトに感じられるものでした。
立派な車格感がないという点ではマイナスでしょうが、フィアット500やミニなどにも通じる可愛らしさやレトロ感が感じられて、優れたデザインであったと思います。

今回のモデルチェンジでは、なんと外板は先代と共通で、フロント、リアともに灯火類とグリル、バンパーのデザインが変更されているだけです。
旧型との相違点を見てみると、幅広感を出して見た目の車格感、安定感を出すことを目的としているようです。

これが功を奏しているかというと…
僕的には、とってつけたような違和感が感じられます。
先代のコロンとした可愛らしさが失われてしまったのではないでしょうか。

ヘッドライトはLEDとなってデイライトも付いて近代的になりましたが、グリルのデザインは先代のほうが洒落ていましたね。
新型は少し無骨に感じられます。

バンパーの幅広のブラックアウトされたデザインも、幅広に見せたい意図はわかるんですが全体的なデザインにマッチしていないように思います。
可愛らしく見せたいのか、お洒落に見せたいのか、立派に見せたいのか、どうもちぐはぐな印象を受けます。
暗色系のボディカラーだと、また違った印象になるかもしれません。

サイドビューは先代と変わりませんね。
高すぎず、低すぎず、安定感が感じられていいですね。
サイドのプレスラインが効いてるのでしょう。

先代の時も斜め後ろから見たときに、少し腰高感が感じられました。
新型も同様の印象ですね。

ところが真後ろから見ると、先代よりも安定感が増しているように見えます。
バンパーの幅広なブラックアウトされた部分のおかげでしょう。
リアデザインはこれでいいのではないでしょうか。

内装

評価:★★★★

さすがNシリーズだけあって、内装の質感は下手なコンパクトカー以上です。
デザインも上質感も操作性も、先代よりも大幅に向上しています。
ですが、N-VANと共通のメーターパネルが少し安っぽく感じられますし、N-BOXやN-WGNと比べると何となく安っぽく感じられました。

N-ONEというキャラクターからすると、配色やデザインにもう少し遊び心が欲しいところですが、総じて軽自動車とは思えないほどの質感です。
各部のタッチも上質ですし、シートの掛け心地も軽自動車としては上々です。

メーターパネルが安っぽく感じられるのと、ハンドルがウレタンスポークなのが残念です。
「プレミアム軽自動車」をコンセプトに掲げるのであれば、ハンドルは全グレード本革巻きにすべきです。
あとは、ステアリングにテレスコピック調整が付いていないのが非常に残念です。
パーソナルユースメインのクルマなのですから、N-WGNでは採用していたものをなぜ採用しないのか理解に苦しみます。
コスト削減を狙ったものでしょうか?

インパネ周りの雰囲気は、落ち着いた上質さが感じられて好印象でした。

シフトレバー周りの質感もいいとは思いますが、N-BOXやN-WGNと比べると少しだけ安っぽく感じられます。

居住性、ユーティリティ

評価:★★★★

ハイトワゴンやスーパーハイトワゴンと比べると、さすがに頭上空間は広大とは言えませんが、必要十分以上の余裕がありますので、日常使いで閉塞感を感じることはないでしょう。
また、N-WGNと違い、リアシート座面のチップアップ(跳ね上げ)、ダイブダウン(足元への沈み込み)が出来るのは大きな利点です。
他メーカーと比較しても大きな強みと言えるでしょう。
それにしても、なぜN-WGNはあのようなリアシートにしてしまったんでしょうね?
N-WGNでチップアップとダイブダウンが出来たら、完璧なクルマになると思うのですが。

リアシートの足元空間は広々としています。
外見からは想像できない居住性を持ち合わせています。

リアシートの背もたれを倒すと座面がダイブダウンして、荷室がフルフラットになります。
背もたれの段差がないと非常に使いやすいですし、大きな荷物や長尺物の積み込みもラクチンです。
これはセンタータンクレイアウトを採用するホンダ車にしかできない芸当で、素晴らしい実用性だと思います。

このように座面をチップアップすれば、背の高い荷物も積めます。
非常に便利ですね。

荷室をフルフラットにすると、軽自動車とは思えないほどの広大なトランクスペースが出現します。
座面を起こした状態でも、意外とトランクスペースが広いのには驚かされました。

走りの評価 (エンジンとミッション)

評価:★★★★

今回試乗したのはエントリーグレードの「Original」ですので、ノンターボではありますが、さすがはVTECエンジンと言えましょうか、非常にトルクフルで力強い走りを披露してくれました。
先代のS07Aエンジンと、最高出力、最大トルクは全く同一なのですが、全く別物と言ってもいいほどにフィーリングは異なります。

先代はアクセルの踏み込みに対してのトルク感が薄く感じられましたし、高回転まで回した時のエンジン音も、3気筒特有の「ガー」という不快なものだったと記憶しています。
先代のノンターボ車を試乗した感想は、
「音がうるさいわりに前に進まないな」とか、
「アクセルベタ踏みにしても遅い…」
といったネガティブなものでした。

新型N-ONEに搭載されている、S07B型自然吸気VTECエンジン自体はN-BOXで体験済ですが、相変わらずアクセル操作に対するトルクのツキが素晴らしく、高回転まで回しても不快な音質ではありませんでした。
むしろ快音と言ってもいいようなエンジンサウンドを奏でてくれます。

車両重量は840kgと決して軽くはないのですが、他社の自然吸気エンジン搭載車と比べても明確に力強く感じられます。
常用域での力強さは超ロングストローク設計の効能だと思われますが、スズキも危機感を持っているのでしょう、バルブリフト可変機構はありませんが、最新のモデルは超ロングストロークのR06Dエンジンへと切り替えが進んでいます。

CVTに関してもダイレクト感があって好ましいですし、街乗りではノンターボで充分だと思います。
高速道路の合流も不安感無くこなせそうですが、高速での長距離移動の機会が多い方はターボ付きにしたほうがいいかもしれませんね。

S07B型自然吸気VTECエンジンに関しては、こちらの記事もご覧ください。

走りの評価 (足まわりとボディ)

評価:★★★

車体の剛性感は非常に高いと思います。
速度が乗った状態で大きめの段差を通過しても、ボディがたわんだりするような感触は皆無でした。
さすがは新世代シャシーと思わされますが、ほのぼのとした外観に似合わず足回りは堅めの設定となっているようです。

新型N-WGNの、しなやかでしたたかなサスペンションセッティングには心底驚かされましたが、N-ONEでは全高が低くなっているにもかかわらず、あのしなやかさが感じられなかったのは非常に残念です。
タイヤの空気圧の関係もあったでしょうが、試乗した限りではどうもダンパーの減衰力が高められているかのようなフィーリングが感じられました。
細かなピッチングは良く抑えられていますが、大きな段差ではサスペンションだけでは吸収しきれずにボディが揺すられるような動きが顕著に出ます。

これは少し前のホンダ車のヤンチャな乗り味です。
これを好む客層も存在するでしょうが、やはり少し古臭いと言わざるを得ません。
このN-ONEは「プレミアム軽自動車」を目指しているのか、走りに特化した汗臭い路線を目指しているのか?
非常にちぐはぐな印象を受けました。

ここまで優れたシャシーを使っているのですから、新型N-WGNよりもさらにしなやかにしても操安性は破綻しなかったと思うのですが。
工業製品としての出来は高水準なのですが、このセッティングは正直なところ感心しません。

新型N-WGNの乗り味に関しては、こちらの記事をご覧ください。

総合評価

評価:★★★

ホンダとしては、年間3万台程度の販売しか見込めない日本専用の車種に、人的資源も経営資源もつぎ込むことは出来ないのでしょう。
既存のコンポーネンツを利用して、先代N-ONEの中身だけ変えたといったようなモデルチェンジになっています。

6速マニュアルが新設されたのは朗報と言えるかもしれませんが、それにしても価格設定が高すぎます。
RSはスイフトスポーツとほぼ同価格となりますが、あえてN-ONEを選ぶ顧客がどれほど存在するでしょう?

今回試乗したエントリーグレードの「Original」ですら、ラパンの上級グレードよりも15万円ほど高い値付けとなっています。
確かに走りも内装もラパンよりは上ですが、一般ユーザーが価格差に見合うだけの価値を感じてくれるでしょうか?

試乗を終えて、なんとも煮え切らない思いが残りました。
少ない予算と人員で行った、やっつけ作業のようなモデルチェンジと感じられたからでしょう。
ホンダとしても、数は少なくともN-ONEをあえて選ぶようなユーザーに細々と売れてくれたらいいと思っているのでしょうね。
それゆえの強気な価格設定と、ボディ外板の使いまわしなのではないかと思います。

誤解なきよう申し添えておきますが、ハードウェアとしては素晴らしい完成度です。
純粋にクルマそのものの出来だけで評価すれば、★★★★といったところでしょう。
ですが、高額な価格設定とデザインの代わり映えの無さにより、個人的には購買意欲をそそられませんし人様にお勧めもし辛いということで、星3つとさせていただいてます。

間近に迫った電動化に向けて、最大限経営資源を割かなくてはならない事情はよく理解できます。
ですが、少ない予算でももう少し何とか知恵を絞って、デザイン面でも走りの面でも「ハッ」と感じさせてくれるような何かが欲しかったと思います。

おそらく新型N-ONEはあまり売れないでしょうし、下取り査定額の値落ちも早いと思いますので遠からず負のループに陥ってしまいそうです。
個人的にもオススメは出来ない車種ですが、試乗してみて乗り味が気に入って、乗りつぶすつもりの方には悪くない選択肢かもしれませんね。
おそらくこの強靭なシャシーは、経年劣化に対しても強いと思われますので。

【2023年4月27日追記】

愛車のフィット3ハイブリッドの車検の時に代車でN-ONEのノンターボモデルをお借りしたのですが、この記事の試乗時の印象とはまるで違っていました。
試乗車が下ろしたての新車だったせいか、それともタイヤの空気圧が高かったからか、1万2千キロ走行の代車の乗り味は比較にならないほど素晴らしいものでした。

大きめの段差でも全く底付き感が感じられず、姿勢変化も極小のサスペンション。
軽自動車とは思えないほど、しっとりとした高級感の感じられるステアリングフィール。
たわみやきしみが皆無の強靭なボディ剛性。
3気筒のネガが全くと感じられず静粛でパワフルなエンジン。
ノンターボでも全くストレスのない加速性能。
カーブや交差点でのリニアな旋回性能も圧巻でした。

ケチを付けるところがあるとすれば、ステアリングのテレスコピック調整がないことでしっくりと来るドライビングポジションが取れなかったことと、踏力に対して唐突に制動力が立ち上がるブレーキフィールくらいでしょうか。

この時に乗った1万2千キロ走行の代車は完璧な出来でした。
下手なBセグメントの車は余裕で超えてますし、Cセグメントの車も真っ青という超絶ハイクオリティ。
他社の軽は、いかに出来が良くても全体的に見ると軽自動車であることを感じさせられますが、ホンダのNシリーズは普通車に全く引けを取りません。
あらためてNシリーズの素晴らしさを痛感させられました。

軽自動車としては価格が高いと考えていましたが、この出来に対してこの価格であればむしろコストパフォーマンスは良好でしょう。
今回乗った代車に関しては、総合評価★★★★★とさせていただきます。

実際の走行フィールはこちらをご覧ください。
拙い動画ですが、ご覧頂けたら嬉しいです。

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この記事を書いた人

釣り、クルマ、猫 が大好きなオッサンです。
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