良かったころのトヨタが帰って来た!
実質的にオーリスの後継者となる、2018年6月26日に販売された新型カローラスポーツを試乗してきました。
グレードはハイブリッドの最上級グレードの「HYBRID G Z」で、
車両本体価格は 2,689,200円 となります。
カローラが凡庸なオッサングルマになって久しいですが、バブル前後の時期のカローラは4輪独立懸架サスペンションで、エンジンも名機4AGを搭載したモデルなどもあって、走りのいいクルマでありました。
もう20年以上前になりますが、僕が雪国で営業職をしていたころにあてがわれた営業車が、AE110型のカローラセダンのディーゼルモデルでした。
2リッター自然吸気ディーゼルエンジンは、1040kgの車重に対して73ps/13.2kg・mでしたので、かったるいクルマではありましたが、ボディと足回りの剛性感が非常にしっかりしていて接地変化も少なく、頼りがいのある相棒でした。
鏡面のような圧雪路でも急激な挙動変化が無く、リアの滑り出しも穏やかでコントローラブルでした。
意図的にタックインを誘発させるのも容易で、コーナーで曲がり切れずに雪の壁に突っ込むなどという事もありませんでした。
動力性能以外は望外にスポーティーなクルマだったと記憶しています。
このクルマで、FF車のドライビングテクニックを随分と磨かせていただきました。
この次の型ではデザインはオッサン臭くなり、リアサスもトーションビームへと退化してしまいました。
さらに次の型以降はスポーツモデルも無くなって、何の印象にも残らない、ただ走ればいいだけというような駄グルマに成り下がってしまいました。
実際の走りも、それはもう酷いものでした。
現状のカローラオーナーの平均年齢は70歳を超えているそうですが、この出来栄えでは指名買いのお年寄りか営業車需要しかないでしょうね。
昔のカローラの走りが良かった訳は、ずばり、プラットフォームとサスペンションを共有していたレビン/トレノの存在でしょう。
当時のレビン/トレノは、テンロククラスでシビック、ミラージュなどの並みいる強力なライバルと切磋琢磨していて、走りの次元は相当に高いものでした。
そのレビン/トレノとシャシーを共有していた、カローラの走りが悪かろうはずがありません。
今回の新型カローラスポーツは、そのレビン/トレノを彷彿とさせるような走りの良さでしたので、追って発売となるセダン/ワゴンの走りも相当期待が持てそうです。
外観デザイン
評価:★★★★
当初メディアに掲載されていた写真を見て「フロントフェイスがカッコ悪いなぁ~。そこまでキーンルックにこだわらなくても…」と思っていたんですが、実車を見てみるとその考えは完全に覆りました。
写真では伝わりにくいのですが、非常に立体感のあるフロントフェイスで、ダイナミックな迫力が感じられます。
従前のトヨタ車のようにごちゃごちゃしたギミックやキャラクターライン、プレスラインに頼らずに、全体が流麗な曲面で構成されています。
斬新かつ精悍で、非常にカッコ良く感じさせられるデザインでした。
もう少し「美しさ」を感じさせられる要素があれば満点の星5つなのですが、現状でも素晴らしいデザインであると思います。
今回は C-HR と違って国内デザインだそうですが、もしかしたら相当にデザイナーの入れ替わりがあったかもしれませんね。
今までの、ただただ無難なトヨタデザインからは想像もできないような高度な出来栄えです。
やはりデザイナーと言うのは「芸術家」ですから、ただ失敗を恐れるだけのサラリーマン気質の人間はデザインに携わる資格がありません。
周りが「狂人か?!」と思うほどのこだわりと執念が無ければ、デザイナーとしては失格でしょう。
この角度から見ると、素晴らしく精悍でカッコいいですね~
全体の塊感も感じられて素晴らしいです。
ちょっと武骨ではありますが、ヘッドライトの造形は立体感に富んでいます。
写真で見るよりも、全然カッコいいじゃないですか!
皆さんもぜひ実車を見てみて下さい。
こうして見ると、キーンルックも悪くありませんね。
エグくなるギリギリのところで、うまく寸止めできています。
前後フェンダーとボディーサイドは、もう少し大胆な面構成としても良かったかもしれませんが、今までのカローラからは見違えるほどの進歩を遂げています。
面のつながりも自然ですし、余計なごちゃついたプレスラインが無いのは素晴らしいです。
この角度から見ると、先代アクセラに似ているような気もしますが…
多少なりとも、マツダデザインの影響は受けているかもしれませんね。
リアフェンダー周りのダイナミックな曲面、各部との自然な繋がりも申し分ないものです。
真後ろから見た姿が、これまたカッコいい!
うーん、大迫力です!
平板なデザインのゴルフ7よりも、よほどカッコいいと思います。
(個人的な感想です)
内装
評価:★★★★★
さすがのトヨタクオリティーです。
ぱっと見は一分の隙もありません。
それなりに高価なクルマではありますが、価格を超えた高い質感が感じられます。
使われている素材もコストが掛かっていそうですし、内装のデザインもスポーティーかつ落ち着きが感じられる佇まいです。
各部にステッチをあしらっていますが、決して下品には感じられずスポーティーな印象を増幅させるものです。
今回試乗したのは、最上級グレードでオプションてんこ盛りの「デモカー」的なクルマでしたので文句なしの星5つですが、廉価グレードはさすがにここまでの質感ではないと思います。
上質ではありますが、退屈さを感じさせないインテリアです。
スポーツカー的な高揚感も感じられました。
インパネはほぼ全面がソフトパッドで覆われています。
これならば、欧州のプレミアムコンパクトと比べても引けを取らないでしょう。
この表皮がアルカンターラ的な質感のシートが、これまた素晴らしい出来です。
サポート性が非常に高いわりには窮屈さが感じられず、実に具合よく体にフィットするものでした。
掛け心地も、硬すぎず柔らかすぎずの絶妙なものでした。
どこを見ても非常に質感が高く、ネガを感じさせられる部分は皆無でした。
ドアの内張りも質感高く、デザインもシックです。
ところどころにあしらわれた赤色が、非常にいいアクセントになっています。
ステアリングの皮の質感、グリップの太さ、デザインの全てが完璧と言っていいでしょう。
このクルマのキャラクターに非常にマッチしています。
テレスコピック調整も付いているのはイイですね。
シフト周りも、言う事なしの質感です。
センターディスプレイも非常に見やすく、空調周りのデザインも高級感が感じられます。
居住性、ユーティリティー
評価:★★★
C-HR よりも実用性は高いですが、驚くほどの広さであるとか積載性はありません。
リアサスが独立式ですのでアッパー部分の出っ張りも大きめです。
それでも充分な実用性はあるのですが、このクルマは走りを重視したスポーツハッチと考えるのが妥当でしょう。
荷室の広さや後席の居住性は、同じCセグメントの インプレッサ や シビック には明確に劣ります。
トランクルームの床面は、一見浅く感じられます。
面積的には充分なのですが…
と思ったら、床面のボードは一段下げることが出来るんですね。
荷物の積み下ろしのしやすさに配慮した、トヨタらしい細やかな心配りですね。
リアシートの足元は窮屈ではありませんが、インプレッサ や シビック ほどの余裕はありません。
これで充分実用的ではありますが、車格を考えるともう少し余裕が欲しいところです。
走りの評価 (エンジンとミッション)
評価:★★★★
僕が運転経験のある先代の3代目プリウスと、ハイブリッドシステムは基本的に共通ですが、エンジンフィールや加速感は別物と言ってもいいほどの違いを感じました。
先代プリウスの1.8リッターアトキンソンサイクルエンジンは全く力感が感じられずに、回転フィールもエンジン音もガサツなものでした。
アクセル操作に対する加速感もリニアな感触が全く感じられず、非常にトロ臭く感じられ、運転していて気持ちよさが感じられた瞬間は全くありませんでした。
「これなら今乗ってる シビック のほうが、よっぽど気持ちのいい走りだな」
と運転当時は感じた記憶があります。
このカローラスポーツに搭載されているものは、相当に改良が進んでいるのでしょうか?
ハードウェア的な改良だけではなく、ハイブリッドシステムの制御プログラムも相当に進化しているように思うのですが、先代プリウスで感じられたネガは全くと言っていいほど感じられませんでした。
若干の線の細さは感じられるものの、アクセル操作に対する加速感は非常にリニアで、ピックアップも良好です。
エンジン音も静粛で、回転フィールも実にスムーズでした。
今回の試乗車には、AVSとセットオプションの「5段階の走行モードセレクト機能」が付いていましたので、その分は差し引いて考えないといけないかもしれませんが、ノーマルモードでも充分にリニアな加速感が感じられるところ、SPORTS+モードではモーターのアシストも積極的に使っているのでしょう、非常にレスポンスのいい、気持ちのいい加速感でした。
これならば、ハイブリッドモデルを積極的に選ぼうという気持ちになります。
ただ、非常に気持ちのいい加速感ではあるものの、スポーツモデル的な豪快な加速感はありません。
日本国内で運転する分には必要充分以上ではありますが、このスポーティーな外観に見合うだけの動力性能が欲しかったところです。
故に星4つとさせていただきます。
走りの評価 (足まわりとボディ)
評価:★★★★★
試乗車には、リニアソレノイド式可変ダンパーの「AVS」がオプション装着されていましたので、その分は差し引いて考えないといけませんが、乗り心地の上質感と段差での振動・ノイズの少なさは高級車レベルのものでした。
18インチタイヤを履いていたにもかかわらず乗り心地は極上で、車線変更の際もぐらついたりふらつくような挙動は皆無でした。
ハンドル操作に対する反応も目の覚めるような機敏さはありませんでしたが、操作に対して非常にリニアで、無駄な動きや接地変化が全く感じられない素晴らしい動きでした。
操舵に対するレスポンスは インプレッサ や シビック のほうが機敏に感じられるかもしれません。
このカローラスポーツは、上記2車種と比較すると感覚的には若干マイルド方向ですが、非常に気持ちのいいハンドリングであると思います。
今回は高速でのコーナリングや、荒れた路面での走行などは試せなかったので断言はできないんですが、非常に高いシャシー・ボディーの剛性と、サスペンションの支持剛性が感じられました。
ダンパーのフリクション感も極少で、4輪がしなやかにストロークしています。
恐らくAVSが付いていなくても、基本的な乗り味は非常にレベルの高いものであろうと思います。
TNGA恐るべし!
これは文句なしの星5つ、満点です。
実際の走行フィールは、こちらの動画をご覧ください。
僕のYouTubeチャンネル も、閲覧&チャンネル登録して頂けましたら幸いです。
総合評価
評価:★★★★
国産Cセグメント車で、自信を持ってオススメできる車種が新たに加わりました。
インプレッサ シビック とカローラスポーツは、実力が拮抗した三者三様に素晴らしい出来栄えです。
インプレッサ はリーズナブルな価格設定と広大なラゲッジスペースが魅力ですし、
シビック は骨太の走行性能と豪快な加速性能が魅力でしょう。
カローラスポーツはトータルバランスの良さと高級感が魅力です。
今回のAVS装着車に関しては インプレッサ と シビック よりも乗り味の上質さは上を行っていると思います。
もう少しの動力性能があれば、全く文句のない完璧なクルマになるかと思います。
あとは価格設定でしょうか。
いかに出来のいいクルマであっても、全体的にあと10万円程度は価格を下げて頂きたかったところです。
故に星4つとさせていただきますが、この出来であれば走り好きの方にも自信を持ってオススメ出来ます。
アンチトヨタの方も、一度試乗されてみてはいかがでしょうか。
きっと認識が改まりますよ~
コメント
コメント一覧 (2件)
やまねこさん、こんばんは。
久々の試乗記、楽しみにしていました。
私もカローラスポーツは気になっていました。最近のトヨタの顔「キーンルック」は最初は変だなぁと思っていましたが、今では慣れました。私はターボの6MT車に乗ってみたいですね。
本日、新型ジムニーが発売されました。新型ジムニーの試乗もお願いいたします。
あ さん、さっそくコメント頂きましてありがとうございます!
ちょっと間が開いてしまいましたが、プライベートもだいぶ落ち着いてきましたので、これからは頑張ってまいります。
新型ジムニーも速攻で試乗に赴こうと思っていたんですが、この大雨が…
試乗リクエストもお応えしていかないとですね。