トヨタ C-HR G-T 試乗記
2016年12月14日の発売以来、爆発的な売れ行きのC-HRに試乗してきました。
グレードは1.2リッター4気筒直噴ターボエンジン搭載のG-Tです。
前記事のルーミーと同じ日に試乗しましたので、ディーラーに行く前は、
「今度はスタイリッシュな街中SUVのヴェゼルの市場を食い荒らす気か!」
「パクリ車の劣悪な走行性能を詳細にレポートしてやる!」
「なにがTNGAじゃ!オ〇ホみたいなネーミングしやがって!」
などと鼻息も荒かったのですが…
すみません!
私が間違っておりました!!
ヴェゼルとは全く格が違うすさまじく良いクルマです!!!
トヨタが本気出したら、こんなに凄いクオリティのクルマが作れるんですねぇ。
もしかしたら、今までは他メーカーが絶滅しないように手加減してたんですか?
最初に結論を言っちゃいますが、価格が倍以上の欧州車(ドイツ車)と肩を並べるか上回るクオリティです。
今頃ドイツ車メーカーは初代セルシオの時のように戦慄していることでしょう。
外観デザイン
評価:★★★★
トヨタのアメリカのデザインスタジオの手によるものだそうですが、エッジが効いてシャープでスタイリッシュ、どのクルマにも似ていない斬新なデザインです。
どの角度から見てもカッコよく見えるのですが…
惜しむらくは真後ろから見たリアビューが、いまひとつカッコよく感じられません。
リアのコンビネーションランプ周りのデザインが突飛すぎてまとまりに欠けるように思います。
故に星4つとさせていただきますが、全体的には斬新でありながら非常によくまとまったデザインに感じられます。
非常にダイナミックでスポーティーなフロントフェイスです。
うーん、カッコいいですねぇ。ルノーメガーヌクーペのような斬新さを感じます。
フロントフェンダー周りの造形は彫刻のようです。ここまで複雑なフェンダーラインを実現するには、相当に高度な金型プレスの技術が必要でしょう。コストも掛かっているはずです。
サイドビューも美しいです。流れるようなプレスラインがいいアクセントになっています。
若干ですがルノーメガーヌの影響が感じられるような気が…
決して奇をてらっただけのエグいデザインではありません。全体の調和も考えて入念にデザインされているかと思います。
個人的にはリアビューはいまひとつと感じられます。コンビネーションランプが浮き出るようなラインに突飛さを感じます。リアビュー全体での美しさ、カッコよさが伝わってきません。
内装
評価:★★★★★
欧州の高級車並みの質感です。
各部のタッチも上質でカッチリとしています。
インパネも全面ソフトパッドで、この価格帯としてはかなり仕上がりのレベルは高いと思います。
さすがにアウディの上級グレードの高級感には及びませんが、充分すぎる質感でしょう。
運転席はスポーツカーのように、いい意味でタイトな包まれ感があります。
シートの出来も上質かつ高級感が感じられるものでした。
センターの操作部は運転席側に向いていて操作しやすいです。
インフォメーションディスプレイも大型で、視線移動も少なく非常に視認性に優れています。
インパネセンターのデザインは、外観に負けないだけの「もうひとひねり」が欲しかったと思いますが、デザインよりも操作性や視認性を重視したものでしょう。
居住性、ユーティリティー
評価:★★★
スタイル優先、ドライバー優先のパッケージングです。
このへんの割り切りは僕的には好感が持てます。
スタイリッシュな2+2のクーペと考えたら充分なユーティリティーです。
後席足元のスペースは最小限です。
さらに座面に対してボディのウエストラインが高い位置にありますので、まるでバスタブに首まで浸かるかのような解放感ゼロの空間です。
トランクスペースは充分な広さです。
走りの評価 (エンジンとミッション)
評価:★★★
オーリスにも搭載されている8NR-FTS型1.2リッター4気筒直噴ターボエンジンは、エンジン単体で見ると吹け上りのレスポンスも良く、音質も上質かつスポーティーな心地のいいものです。
参考までにブリッピング動画もご覧ください。
僕のYouTubeチャンネル も、閲覧&チャンネル登録して頂けましたら幸いです。
最高出力116馬力、最大トルク18.9kgmというものですが、1470kgの車重に対して明らかに動力性能が不足しています。
率直に申し上げて、「遅い」クルマです。
運転していても、微小なアクセル開度ではなかなか望む加速が得られずに、ペダルを深く踏み込むとCVTのギア比が一気に下がってエンジン回転が高まるものの、なかなか希望の速度に達しません。
典型的な動力性能が不足したCVT車のフィーリングです。
CVT自体のダイレクト感は高いので勿体ないことです…
高速道路の巡航では気持ちのいいフィーリングとなるのではないかと想像します。
このクルマは高級感に浸りながら、のんびりと運転するのが向いています。
走りの評価 (足まわりとボディ)
評価:★★★★★
トヨタの新世代プラットフォーム「TNGA」は素晴らしい出来栄えです。
非常に乗り心地と操安性のバランスが取れていて、ハンドリングの正確さも素晴らしい水準です。
ロードインフォメーションも適切にあり、段差のいなし方は完全に高級車レベルです。
トヨタがこのクラスのクルマに後輪独立サスを採用する事にも驚かされましたが、見事に功を奏しています。
僕の知る限りでは、先代アウディA4よりも段違いに格上、現行アウディA7あたりと肩を並べうる上質な乗り味です。
ボディ剛性はドイツの高級車ほどのレベルではないですが、充分な剛性感があります。
想像するに、足まわりとボディでコストが掛かって、ドライブトレーンにまで予算がまわらなかったのでしょう。
総合評価
評価:★★★★
動力性能不足が惜しまれます。
クラウンに搭載されている2リッター直噴ターボでは過剰ですし、現状のトヨタのラインナップではこのクルマにマッチングする適切なエンジンが存在しません。
トランスミッションはクラウンに搭載のトルコン式8速ATが適切でしょう。
スズキも1.4リッター直噴ターボエンジンを日本市場に投入してきますし、ホンダも1.5リッター直噴ターボエンジンをすでに投入済みです。
トヨタも1.2リッターと2.0リッターの間を埋める1.5リッタークラスのダウンサイジングターボエンジンが必要なのではないでしょうか?
現状でも「のんびりと走るスタイリッシュな高級車」と考えると非常にいいクルマです。
価格が高いとの指摘もありますが、このクオリティの欧州車を購入しようとすると倍以上の価格となるでしょうね。
そう考えると非常にお買い得なクルマと言えます。
コメント
コメント一覧 (15件)
はじめまして。
今はさほどの車好きではありませんが、欧州車を2台乗り継いだクチです。
偶然にレンタカーで(ガソリン4駆の安い方のグレードを)あてがわれましたが、身銭を切って買う車にはなり得ないと思いながら走り始めました。こちらに書かれていらっしゃいますのと同様、走り始めて数分で仰天しました。トヨタにもこの味の足回りが作れるのですね。内装も割と好感が持てました。荷物の積載性等が我慢できれば、足回りの感触の良さだけで次期マイカーの候補です。
後から出たガソリン2駆も試乗しましたが、足回りの感触は少し普通の国産車に近付いていました。バネやダンパーの型番は、ガソリン2駆のみが(ハイブリッド2駆やガソリン4駆と)違うようです。車重の違いによる必然性だけでなく、ライトユーザー向けということから味付けを変えたのかもしれません。機会がありましたら、ガソリン2駆と比較されては如何でしょうか。
お邪魔いたしました。
すずめのすさん、はじめまして。
コメント頂いてありがとうございます。
僕も全く期待しないで試乗したのですが、足周りの出来の良さには驚かされました。
最近のトヨタ車はカローラスポーツといい、非常にレベルが高いと感じられます。
20年ほど前には国産車と欧州車でかなりの違いが感じられたものですが、最近の国産車は遜色が感じられないクルマが多くなってきましたね。
国産車のほうがランニング費用が安上がりですので、我々ユーザーにとっては嬉しい限りです。
このC-HRも自信をもってオススメ出来る車種です。
あまりかっ飛ばさずにゆったりと走られる方には、もってこいのクルマかと思います。
バネとダンパーの件、初めて知りました。
貴重な情報ありがとうございます!
機会がありましたら、ぜひ二駆のほうも試乗してみたいと思います。
後日談です。
結局、C-HR G-T(ガソリン4駆)を購入しました。足まわりは良いのですが、スポーツモードで床まで踏んづけてもあの加速。少々非力ですので、過給圧UPと(効果ないかもしれませんが)点火系強化をしました。(中間加速は、少し良くなったかもしれません。あと、燃費も。) この手のイタズラがしやすいのは、国産でそこそこ数の売れたクルマの強みかもしれません。
C-HRを購入されたんですね!
素晴らしいチョイスだと思います。
ですが、仰る通りに動力性能が少し物足りないですよね。
ただ、この1.2リッターターボエンジンはカローラスポーツにも搭載されていますので、これからもアフターパーツはどんどん出てくるのではないかと思います。
カローラスポーツに関しては既にECUが発売されているようですし、このエンジン用のビッグタービンも発売予定のようですので、少々予算はかさみそうですがC-HRもかなりのパワーアップが可能になってきそうですね。
おいそがしいところ、ありがとうございます。
カロスポ用には、ECUやタービンも出ているのですか。私には少々垣根が高いかもしれませんが、どうしてもパワー不足が気になったら考えてみることにいたします。(そこまでに至る前に、もしもノックセンサーで遅角しているなら、ハイオク入れるだけでも少しは効果あるのかもしれません。)
すずめのすさん、ありがとうございます。
そうですね。
恐らくオクタン価 95RONのマッピングが組み込まれてるような気がしますので、ハイオク入れたら体感できるだけのパワーアップするかもしれませんね。
ノーマルでも過不足ない動力性能ですので、ゆったりと流すのがこのクルマのキャラクターにはあっているのかもしれません。
ご返信遅くなりまして、恐縮至極です…
現状、多忙な日々が続いておりまして、なかなか出口が見えない状況なんです。
時間に追われるほど忙しいって凄く幸せな事だとは思うんですが、大好きな釣りになかなか行けないのがツライですねぇ…
釣りにおいでになるお時間もないとのこと、体調を崩されませんよう、ご自愛ください。
オクタン価95前提のマッピングであったら、嬉しいところなのですが知るすべもありませんので、空に近くなったところでレギュラーを入れて、様子を見ています。(気持ち、トロくなったような気もしますが、まだ確信を持つには至っておりません。)
ところでT社関係の知り合い(私のことをクルマ好きと思ってくれています)がおりまして、「C-HR 買った」と申しましたら喜んでくれました。話すうちに「スポーツモードへの切替がメニューからでないと出来ないのは、難点」と申しましたら、どうやらこの点は、メーカー社内でも認識されているようでありました。残念ながら燃料のマッピングについては……
すずめのすさん、お気遣いいただきありがとうございます。
せっかくコメント頂いているのに、なかなかブログ更新できない状況で心苦しい限りです。
トーションビームに変更になった、MAZDA3も試乗してみたいのですが…
なるほど、スポーツモードの切替が面倒だったんですね。
次の改良でスポーツモードのボタンが新設されるかもですね。
確かに、ここぞという時の加速は、もうちょっとだけ欲しいようにも感じられました…
う~ん、95RONのマッピングは日本国内向けには有りませんでしたか…
残念ですね~。
その後、少しはお時間がとれるようになりましたでしょうか。
「山道にさしかかったので、スポーツモードへ」といった時には、不自由しています。たしかカロスポは、メニュー使わずにモード切替が出来たように思います。C-HRでの反省があっての改良かもしれません。
マッピングについたは、「分からない」との答えでした。かくなる上は、OBD2にアダプタさして点火時期を読み出して、レギュラーとハイオクで比べるしかなさそうです。
お気遣いいただきありがとうございます。
m(__)m
なかなか空き時間が出来なくて…
仕事してるか寝てるかで一日が終わっちゃいます。
まさに貧乏暇なし状態ですね(笑)
でも、忙しいってことは幸せな事なんじゃないかとも思います。
う~ん、C-HRもカロスポと同様の改良が入るかもしれませんね。
マッピングはどうなんでしょうねぇ?
レギュラーとハイオクで馬力測定したらわかるかもですが、費用が…(笑)
相変わらず、お忙しいのでしょうか。ご自愛ください。
そろそろマイナーチェンジのC-HRですが、私が現時点で知る限りではパワーUPしたエンジンの搭載は無いようです。やはりT社には、手頃に流用できるエンジンがないからでしょうか。
ところで、7月にはしばらくの間レギュラーガソリンを入れて、OBD2を使ってスロットル開度や点火時期のログをとりました。そして8月に入ってから再びハイオクを入れ、同じようにログをとりました。
同じ急坂を2速あるいは3速固定(といってもCVTですが)で40km/hで登った際のログを比較しましたところ…… そもそもレギュラーでは一定速度の維持が少し難しくなりやすく、(そんなに細かくアクセル開度を変えたつもりはないのですが)スロットル開度はかなり上下しておりました。点火時期には(スロットル開度の上下に伴うであろうものを除けば)レギュラーとハイオクで、顕著な差は見られませんでした。それよりも前述のように、ハイオク使用時にはほぼ一定のスロットル開度で滑らかに登れていることが、印象的でした。したがいまして実のパワーと燃費はさておき、少なくとも(過給圧と点火系が弄ってある)自分の車に関しては、ハイオク使用にメリットありと感じた次第です。
お忙しいとは思いますが、今後も面白い試乗記を期待いたしております。
他の試乗記を読ませて頂き、V40やカリスマにご縁がおありだったとのことを知りました……
すずめのすさん、ご返信遅くなり誠に申し訳ありませんm(__)m
コロナのおかげ?で急に暇になりまして、その間ブログはほったらかしになってしまっていました。
非常に興味深い結果ですね。
加給圧と点火系をチューンされていることで、ECUの補正が入っていたのかもしれませんね。
とは言っても、点火時期に違いがないとのことですから、バルタイに補正が掛かっていたのでしょうかねぇ…?
返信ありがとうございます。
スロットルが電制になってから、こんな制御もするようになったのですね。点火時期については謎ですが、スロットル開度一定のまま、かなり進角したままで上れているので、ハイオク使用はアリと思っています。普段から燃費も少しよくなるようですし。
すずめのすさん、ご返信ありがとうございます。
実に興味深いレポートありがとうございました。
やはり、ハイオクのノッキング耐性の高さが関係してそうですね。
レギュラーの場合は、点火時期の細かい遅角制御が入っていたのか?
それともバルタイか?
どちらにせよ、いじっている車にハイオクは、意外と補正が掛かっていい方向に向かうのかもしれませんね。
僕も昔のクルマでデスビ弄って、なんちゃってハイオク仕様にして遊んでました(笑)
返信ありがとうございます。
たしかに今のエンジンなので点火時期だけでなく、バルタイも考えられます。気付いておりませんでした。
弄っているクルマなら、一回はハイオク試して損はないと思います。
私も昔、バキュームでの進角を止めてデスビ廻したりしていました。
今はコロナで逆に仕事量が増え、心の余裕が……