スズキ ワゴンRスティングレー HYBRID X 速攻試乗!
2017年2月1日に発売となったばかりの6代目ワゴンRに、さっそく試乗してきました。
グレードはノンターボ・マイルドハイブリッドの HYBRID X です。
今までにワゴンRは初代と3代目を何度か運転したことがあるのですが、率直に申し上げて悪い印象しかありませんでした。
ペナペナのボディ剛性、ガーガーとうるさいK6A型エンジン、悪路でバタつくI.T.L式リジッドリアサスなど、それらが相まってクルマ全体の一体感が全く感じられずに、運転していて気持ちよく感じられた瞬間は皆無でした。
自然吸気エンジンとトルコン式ATでは車重に対しての動力性能も圧倒的に不足しており、普通に流れに乗るだけでも大変な思いをした記憶があります。
「絶対にマイカーにはしたくないな」
当時はそう思ったものです。
最近のワゴンRは運転したことが無かったのですが、このところホンダのNシリーズに押され気味であったのは、やはり走りのクオリティが明確に劣っていたのが原因ではないかと推察します。
このあいだ代車で運転したN-BOXは、軽自動車としては素晴らしいクオリティでしたので。
もちろんスズキとしても、売れ行き不振の原因を徹底的に分析したうえでのフルモデルチェンジでしょうし、最新のプラットフォームに移行して、遂にI.T.Lと決別してトーションビームとなったリアサス(FFのみ)の出来栄えも気になるところです。
果たして新型ワゴンRは完全復活を果たせるだけの出来栄えだったのでしょうか?
外観デザイン
評価:★★★★
全体的に非常にまとまりがよく、カッコよく見えるデザインと思います。
このクルマを見て、「カッコ悪い」とか「ダサい」などという感想を持たれる方はほとんどいないのではないでしょうか。
年配の男性が乗っても恥ずかしくない、シックなデザインと言えるでしょう。
細部のディテールまでよく練られた、軽ハイトワゴンとしては非常に完成度の高いデザインと思います。
流行に乗って意味のないギンギラギンのデカグリルにしていないところも好感が持てます。
ただ…お気づきの方もおられると思いますが、フロント周りのデザインがキャデラックCTSにそっくりなんです…
いや、カッコいいんですよ…
カッコいいんですが、あまりにも似すぎじゃないですか?
あと、Bピラーのデザインも初代エルグランドの影響がありそうですね。
上記2点が無ければ、僕的には満点のデザインなのですが…
星4つとさせていただきます。
キャデラックが軽自動車を開発したら、こんなデザインになるでしょうね。
もしかして、同じデザイナーの作品なんでしょうか?
フロントマスクは精悍で、立体感があって、ワイド感もあります。
アメ車のピックアップトラックみたいで、ワイルドでカッコいいですね。
ウインドウ外周をボディパネル面から窪ませることで、サイドビューの立体感をうまく引き出しています。
室内空間確保のためサイドパネルをできるだけ垂直に立てなくてはならない制約の中で、非常に巧みなデザインがなされていると思います。
どの角度から見ても破綻無くまとまったデザインです。
ですが…Bピラーの処理にはエルグランドの影響が若干感じられます。
リアビューはもうひとひねり欲しかったところですが、こちらもまとまりのいいデザインです。
内装
評価:★★★
軽自動車としては質感は高いほうですが、新型スイフトと比較すると明確に質感は落ちます。
インパネの樹脂の質感も劣りますし、いかにも硬質プラスチックといった感じがします。
各部スイッチのクリック感も、スイフトで感じられたような高級感はありませんでした。
センターメーターにしたせいか、デザイン的にも少しごちゃごちゃした印象を受けます。
ヘッドアップディスプレイは見やすくてカッコいいんですが、空調スイッチはもう少しドライバーに近づけたほうがいいのではないでしょうか。
全体的に、もうちょっとうまくまとめてほしかったと思います。
あまり価格が変わらない新型スイフトに対して、質感不足、煮詰め不足が感じられるのは、かたやグローバルカーで、こちらは国内専売のガラパゴスカーであることが原因でしょうか。
開発に際しての人的資源と予算の規模が、かなり違うものと推察します。
軽自動車のカテゴリーの中では質感は高い方ですが、もはや軽自動車は小型車と変わらない価格となってしまったため、もうひと頑張りが必要でしょう。
シートは体重を分散して支えてくれるもので、出来はいいと思います。
ハンドル径、グリップの太さともに適正です。非常に握り心地のいいステアリングです。
個人的にはセンターメーターは見づらく感じられて好みません。
空調スイッチの場所も、もう少しドライバー側に近づけたいところです。
シフトレバーのインジケーター部分のプラスチックの質感が低すぎます。
これは要改善かと思います。
インパネの硬質プラスチック然としたテカリが気になります。
質感を高めるために、素材そのものかシボの変更が必要でしょう。
居住性、ユーティリティー
評価:★★★★
先代よりも大幅にホイールベースが伸びた効果で、室内長はクラス最大です。
後席足元は広大なスペースとなります。
すみません…
当初リアシートのスライド機能が無いとの記述をしてしまいましたが、調べるとスライド可能でした。
僕の調査不足でした。
深くお詫び申し上げます。
後席も左右独立で16cmスライド可能ですので、4人乗車の状態で大量の荷物を積載できます。
トランクスペースはミニマムですが、背もたれを倒すかリアシートをスライドさせると広大な荷室となります。
走りの評価 (エンジンとミッション)
評価:★★
今回試乗したのは、自然吸気3気筒R06A型エンジン搭載の HYBRID X というグレードのFF車です。
4代目まで搭載されていたK6A型エンジンとの比較では、騒音・振動は大幅に低減されています。
回転フィールも3気筒としてはスムースで、ホンダのS07A型自然吸気エンジンよりもはるかに静粛で、スムースネスも若干上回っているように感じられます。
ブリッピング動画も是非ご覧ください。
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出来のいいエンジンとは思います。
ですが、新型スイフトRStに搭載のK10C3気筒直噴ターボエンジンと比べると、スムースネスでは引けを取りませんがエンジン音は明らかにうるさいです。
音質も、K10Cほどスポーティーで心地のいいものではありません。
ターボと自然吸気との違いはありますが、おそらく軽量化の為、K10C型エンジンよりもブロック剛性が低いのでしょうか?
それとも遮音材の量の違いでしょうか?
明らかにクラスの違いを感じさせられます。
ミッションはCVTで、3.1PS/5.1kg・mの小型モーターのささやかなアシストが付きますが、790kgの車重に対して、52PS/6.1kg・mのエンジンでは明らかに動力性能不足です。
希望の速度に達するまでにかなりの待ちがありますし、急加速時にはエンジンは高回転に張り付いたままで、不快な音質ではないもののエンジン音がかなり騒々しいです。
仕方のない事ですが、回転数と速度上昇の違和感は大いにあります。
バレーノXGと比較すると、CVT自体のラバーバンドフィールも若干感じられました。
ただ、軽ハイトワゴンの自然吸気車としては、かなり頑張っている方でしょう。
一般道ではモーターアシストの効果もあるのか、どうしようもないほどの痛痒を感じることはないかと思います。
高速の合流もフルスロットルで頑張ればなんとかなるレベルです。
アイドリングストップからの復帰は、セルモーターを使わずにアシストモーターを使用しますので素晴らしく自然です。
走りの評価 (足まわりとボディ)
評価:★★★★
新型プラットフォームとリアサスのトーションビームの効果は絶大です。
先代は運転したことが無いのですが、おそらく乗り味は見違えるほどに向上していることでしょう。
運転経験のある初代、3代目と比較すると、全く別の乗り物と言っていいほどの違いです。
もはや小型車と比較しても全く見劣りしないほどの、素晴らしい乗り心地とハンドリングです。
ボディ剛性も軽自動車とは思えないほどに高く、サスペンションがしなやかに動いてボディの揺れを最小限に抑えています。
ハンドリングもリニアかつ正確で、段差のいなしもソフトでいながらコシのある上質なものです。
スズキはFF小型車造りにおいて、既に高い知見を得ているものと思われます。
総合評価
評価:★★
軽自動車としては非常に完成度が高いのですが、このグレードとほぼ同じ金額でバレーノの上級グレードであるXSが買えてしまいます。
言うまでもなく、動力性能も運動性能も圧倒的にバレーノが上です。
実用燃費も、それほど変わらないでしょう。
自動車税の差額、年間2万4千円・月間2千円を節約するために、これほどの違いを許容できるかどうかです。
僕的には、駐車場や道路事情で軽自動車以外の選択肢が無い場合を除いては、普通自動車を選択すべきと思います。
ここまで安全装備、快適装備の要求が高まってくると、国内専売の軽自動車は今後ますます価格競争力を失っていくであろうと思われます。
バレーノのように労働力の安い新興国で生産して輸入する方法も、他国での需要が前提ですので軽自動車では使えません。
ではどうするか?
僕は今こそ軽自動車の規格を改正すべき時と思います。
排気量を880ccに拡大し、車幅、全長を10cm程度拡大して、馬力上限の自主規制を撤廃します。
そうすることで、グローバルな市場でミニマムトランスポーターとしての需要を見込めますし、1300cc前後の4気筒エンジンと、かなりの部品共有が可能です。
仮に自動車税を年間3千円程度増税したとしても、実用燃費が向上した分で相殺できるでしょう。
どうでしょう?
メーカー、消費者、国の三者がともに三方一両得となりませんか?
コメント
コメント一覧 (14件)
私もワゴンRに試乗しました。リアサスがトーションビームになったおかげで乗り心地が良くなったし、ターボ無しのマイルドハイブリッドは一般道なら全く不足ありません。試乗後に自分の車(HG21S型セルボ・NA車)に乗った時はパワーが無く感じられ、リアサスのI.T.Lの突き上げの乗り心地の悪さと安定の無さで悲しくなってしまいました…。゚(゚´ω`゚)゚。内外装のデザインは気に入ってるんですけどね…。
コメント頂きまして、ありがとうございます。
あの型のセルボに乗られてるんですね。
あのデザインは凄くカッコイイと思います。
販売面ではパッとせずに希少車となってしまいましたが…
なかなかの好き者とお見受けします(笑)
今回のワゴンRは軽自動車としてはビックリするほど上質な乗り味ですよね。
街乗りオンリーならば良いクルマと思います。
セルボも当時のスズキ車としては完成度が高かったとおもいます。新型ミライースにも試乗しましたが、内装はセルボの方が勝ってます。特にシートの出来が違います。セミバケットタイプで長距離でも疲れにくいです。ミライースは上級グレードにシートヒーターが付いていますが、シートヒーターを付けるくらいならシートにコストをかけてもらいたかったと思います。私もセルボは最下級グレードのGですが、全車に両席エアバッグ、チルトステアリング、シートリフター、プライバシーガラスが標準装備なのに、何故かGだけはABSがオプション設定なのか疑問が残る車でした。ダイハツのソニカと良く比較されていましたが、奇しくもセルボと同じ僅か3年間しか生産されませんでした。
セルボは当時「オッ」と思わせられるほどカッコ良く感じられました。
たしか、アルトやワゴンRと比較して上質なクルマという成り立ちでありましたね。
ソニカも個人的には非常にそそられましたが、全体のプロポーションはトゥデイのようでスタイリッシュだったのですが、フロントマスクが全てを台無しにしていたと思います。
新型ミライースは安くて実用的なクルマがコンセプトなのでしょうが、内装にしても、乗り味にしても限られた予算の中で、もっと頑張れたんじゃないかと思います。
クルマは単なる実用品ではなく、ただ走ればいい、曲がればいいといったものではないと思うんです。
操安性や疲労感の少なさはアクティブセーフティーにも関わってきますので。
内装の空調パネルなどは完全に先代からのキャリーオーバーに見受けられますが、せめてもう少し質感高く見える素材への変更などがあっても良かったのではないでしょうか。
新型のワゴンRスティングレーは、フロントマスクがキャデラック・エスカレードに似てますね…既にGMグループから離れているのに未だに影響が残っている…名前の「スティングレー」と言えば、「コルベット・スティングレー」を思い出すし…。
「カッコ良ければヨシ!」と言いたいところなのですが…
ちょっとインスパイアの域を越えちゃってるかもしれませんね。
おそらく、この世にキャデラックのデザインが無い状態では、ワゴンRスティングレーのあのデザインは生まれなかったでしょうね。
完成度が高くてカッコいいデザインとは思うのですが…
1998年の軽規格改正時に排気量UPも検討されたそうですが、トヨタ、ニッサンの登録車メーカーが反対した為、据え置かれたらしいです。(現在は両社とも軽自動車を販売していますが…)
登録車、バイクの馬力規制が撤廃されているのに、軽自動車の馬力規制が撤廃されないのは、恐らく軽自動車はガラパゴス的な商品だからだと思います。欧米から、「非関税障壁だから軽自動車を廃止しろ」と言われているそうです。
私の乗っているバイクは1300ccの100馬力で、同排気量のバイクにしては馬力が低めですが、(同じ1300ccのスズキ隼は197馬力で300km/h以上も出ます)当時の馬力規制で「バイクは100馬力まで」があった為です。
クルマの1300ccは普通ですが、バイクの1300ccはバケモノです。それを考えると1300ccの半分の排気量で50馬力そこそこで1トン弱の車体の軽自動車は、力不足ですが、市街地では普通に走れるのだから、日本の技術には感心してしまいます。
現状では抵抗勢力もない状態で規制を撤廃できないのは、いったい何が障壁となっているのでしょうかねぇ?
業界側からの陳情が無いのか?
それとも行政の怠慢なのでしょうか。
規制を撤廃するのみならず、今こそ軽自動車の規格そのものを、ミニマムコンパクトカーとして理想的かつ合理的な排気量とボディサイズに改正すべきタイミングではないでしょうか?
きっと国外でも支持が得られてコストダウンにもつながるかと。
軽自動車のこれ以上の価格上昇が抑えられて、国内のユーザーの利益にも繋がるハズです。
ハヤブサのエンジンは凄いですよね!
海外では、その凄いエンジンにボルトオンターボしてクルマに積んでしまうようなクレイジーな方もおられるようですね。
やまねこさんもご存知とは思いますが、軽自動車の馬力規制のきっかけを作ったのは、初代アルトワークスです。
バイクの馬力規制のきっかけを作ったのは、スズキのRG250ガンマです。
また、バイクの300km/h規制(スピードリミッター&メーター表示)のきっかけを作ったのは、スズキの隼(隼の初期型は350km/h迄メーターに刻まれていました)
規制関係で全てスズキが関わっているという、とんでもないメーカーです。
かつて、国内販売のバイクは750ccに規制されていて、そのきっかけを作ったのは、ホンダCB750FOURで量産2輪車世界初の4気筒エンジン、ディスクブレーキ採用車でした。それに対抗してカワサキがZ1(900cc)を発売する予定でしたが、750ccの自主規制が敷かれてしまった為、Z2(750cc)として国内販売され、Z1は輸出専用となりました。現在はZ1、Z2共、300万円を超えるプレミアバイクになっています。
そうでしたね。
550cc時代のアルトワークスでした。
僕は助手席には何度か乗ったことがあるのですが、恐怖を覚えるほどの速さでした。
(あくまで体感的にですが…)
あの頃のアルトのシャシーやサスペンションのポテンシャルは、64馬力がギリギリのラインだったように思います。
64馬力規制も、当時は充分に合理性があったでしょう。
現代においては、シャシー、タイヤ、アクティブ・パッシブセーフティーの技術は、当時とは比べ物にならないほどに進化しております。
最近試乗したS660や現行のアルトワークスなどは、100馬力オーバーを余裕で受け止めるであろうシャシー性能を持っていました。
既に意味をなしていない64馬力規制だけでも早急に撤廃して、軽自動車市場に再び活気が戻るようにして頂きたいものです。
(自主規制となっていますが行政指導である事は明白です)
カワサキの「ゼッツー」懐かしいですねぇ。
僕らが若かりし頃は憧れの的でした。
いきなりすみません。いつも楽しく読ませてもらっています。Bピラーの処理はエルグランドというより、アルファード・ヴェルファイアに似ているように思われます。細かい事ですいません。あと、個人的にはインテリアがステップワゴンスパーダにインスパイアされている気がしました。
ヘルメッターさん、はじめまして。
コメント頂いてありがとうございます。
いつも僕の拙い記事をご覧いただけているなんて、感謝感激です!
言葉足らずでしたね…
初代エルグランドの、前傾したBピラーに似ているように感じました。
記事も追記しておきます。
確かに現行型のエルグランドとは全く似てませんね。
想像ですが、アルファード・ヴェルファイアも初代エルグランドの影響を受けているような気がします。初代エルグランドは大人気モデルとなりましたし、デザイン的にも商用ワゴン的な1BOX車が多い中で、当時としては斬新でした。
これからも、お気づきの点ございましたら、ご指摘いただけたら非常に助かります。
ありがとうございました!
返信遅くなりすみません。確かに、初代エルグランドのBピラーと同じ形ですね〜。アルヴェルなどいろんな車で採用されているということは、高級感的なものを醸し出してくれるのでしょうかね。これからも試乗記楽しみにしてます。頑張ってください!
ヘルメッターさん、ご指摘ありがとうございました。
非常に助かります!
また何かお気づきになられましたら、ぜひともお教えいただきたいです。
次の試乗記もアップしたいんですが、非常に多忙な日々が続いてまして、なかなか手が付けられない状況です…
すでにネタは仕入れてますので、近日中にはアップさせていただきます。
寒い日が続いてますので、お風邪など召されませんようご自愛ください。