見せてもらおうか。国産初のシリーズハイブリッドの性能とやらを。
発売以来爆発的な売れ行きを見せている ノート e-POWER ですが、実は僕自身、この車種には全く興味が無いんです。
「なぜここまで爆発的な人気となっているのか?」
その要因にのみ興味が沸いて、試乗へと赴きました。
モーターはEVのリーフ用の流用ですし、発電用エンジンも、既存の安普請の1.2リッター3気筒をデュアルインジェクション化して熱効率を若干向上させただけのものです。
リチウムイオンバッテリーもサプライヤーに要求仕様通りに作ってもらうだけですから、あとメーカーがすることと言えば、制御プログラムの作成(これも外注かもです)と重量増加に伴う若干の補強と足回りの設定だけです。
あとは耐久テストも必要ですが、僕には既存のコンポーネンツを組み合わせただけのお手軽クルマなのに「新世代の新しい乗り物」などとうたっているところが、どうも気に入らないんですよ。
かように、シリーズハイブリッド自体は技術的には敷居の高いものではありません。
この ノート e-POWER の爆発的な売れ行きを見て、恐らく他メーカーも追随してくるものと思われます。
トヨタなどは作ろうと思えば、スグにでも作れるでしょうね。
日産も「何十年振りかで販売台数首位を獲得!」などと、浮かれている場合ではないですよ。
うまくスキマをついたことと、マーケティングが今回の成功の要因でしょう。
もっともっと、クルマの本質的な魅力を高めないと、せっかくのこの好機にリピーターを増やせないでしょう。
デザイン、内装、走りを試してみて、そのように感じました。
外観デザイン
評価:★★
マイナーチェンジ前から凡庸なデザインと思っていましたが、量産車ゆえでしょうか、とにかく嫌われる要因を作らないように無難にまとめているように思います。
嫌味な部分はあまりありませんが、カッコ良さやオシャレさ、可愛さなど、心に響く要素が何も感じられません。
これでは所有欲が沸いてきませんねぇ。
マイナーチェンジ前の魂が抜けたような腑抜けたデザインと比べると、フロントフェイスは幾分かはマシになっていますが、元が元だけにモディファイも限界があります。
同じグループのルノーは大胆で粋なデザインのクルマが多いのに、日本向けの量販車種となると、途端にこのような愚にも付かないデザインになってしまうのは何故なのでしょうか?
同じ日産でも、現行のスカイラインやフェアレディZは日産らしいカッコ良さに溢れていると思います。
ぜひあのようなデザインセンスをコンパクトカーでも見せていただきたいものです。
このボディカラーだと、そこそこカッコ良く見えてしまいます。
トゥインゴと同じ色でしょうか?いいカラーだと思います。
フロントフェイスはV字グリルが加わって、しまりのある顔つきにはなりました。
無難で平凡ですが、まとまりはいいかと思います。
ボディサイドのプレスラインが意味不明です。
いったい何を表現したいのでしょうか?
ボリューム感? 流麗さ? ダイナミック感?
どこかで見たような、ありきたりなデザインです。
何ら琴線に響きませんねぇ。
曲線を多用して流麗に見せようとの意図は伝わりますが、キレが無く印象に残りません。
次期ノートはルノーにデザインしてもらってはどうですか?
内装
評価:★
酷い!
その一言に尽きます。
僕が仕事用で乗っている15年以上前のシビックEU1と大差ない質感です。
使い勝手はむしろシビックのほうが上です。
まあ、下位車種のマーチを見てもわかるように、カルロスゴーン体制では原価率を抑えつつ、出来るだけ高い価格で販売することが求められるのでしょうが、もう少し工夫のしようもあるでしょうに。
内装のデザイン、各部スイッチのクリック感、素材の質感に、上質感、いいもの感は全く感じられませんでした。
スイフト、デミオと比較すると誰でもわかる質感の低さです。
C-HR、インプレッサとは天地ほどの差があります。
ご購入を検討されている方は、一度試乗されてからのほうがいいですよ!
唯一好感が持てたのが、ウレタンスポークのハンドルの握り心地です。
柔らかく、しっとりと手に馴染みます。
これならば本革でなくてもいいかと思わせるほどに出来のいいものでした。
全体に安物感が漂っています。
シートの掛け心地は及第点ですが、ルノーの夢心地のようなシートと比べると…
表皮の質感とカラーリングもセンスが感じられません。
ドアの内張りのプラスチックの質感、ウインドウスイッチの質感はシビックEU1と大差ないです。
僕が一番酷いと感じるのが、このインパネセンター周りです。
ピアノ塗装風の安っぽい光沢のプラスチック素材で、お分かりいただけますでしょうか?
ほこりが付くと、凄く目立って汚らしく感じます。
実用性をちゃんと考えてますか?
これで高級感があればまだ許せなくもないですが、テカテカの安っぽい光沢でゲンナリします。
空調スイッチも、いちいち目線を移動してからでないと操作できない代物です。
こんな状態でゴーサインを出してしまう主査や上層部のいる会社って、僕的には信頼できません。
この程度の配慮が出来ず、想像力の欠落した組織が作る「日本初のシリーズハイブリッド」って、耐久性とかホントに大丈夫なんですか?
居住性、ユーティリティー
評価:★★★★
センターコンソールが邪魔ですし、トランクのリアサスのアッパー周りの出っ張りが少し大きいように思います。
ですが、充分に広い空間が確保されていて、実用性は良好です。
後部座席にも高級感は有りませんが、充分にくつろげる広さです。
身長175cmの僕がドライビングポジションの調整をした状態です。
後席足元は充分な余裕があります。
トランクスペースの奥行きは充分なのですが…
リアサス周りの出っ張りが少し大きいように思います。
走りの評価 (エンジンとミッション)
評価:★★★
各方面では、モーター駆動によるピックアップの良さと、回生ブレーキを強く効かせるモードでのワンペダルドライブが新鮮で、既存のクルマとは一線を画した新鮮な運転感覚といった感じの論評となっているかと思います。
今回は市街地での試乗しかしていないのですが、安全な場所で何度かフルスロットルも試させていただきました。
発進はモーターのみでの駆動となりますが、予想外にすぐにエンジンが掛かります。
始動のショックは殆ど感じられずにスムーズですし、1.2リッター3気筒エンジンも想像以上に静かで振動も少なく感じられました。
シリーズハイブリッドですから、エンジンは駆動系からは完全に切り離されていますので、恐らくエンジンマウントを柔らかくしているのでしょう。
音質は「ガー」という3気筒独特のものですが、先代プリウスのガサツなアトキンソンサイクル4気筒エンジンよりも上質でありましょう。
遮音も入念に対策されているようです。
1210kgの車重に対して、3000回転で109PS/25.9kgmを発生する強力なモーターで駆動しますので、試乗前には、のけぞるような加速と、タイヤと直結したかのようなダイレクトなアクセルレスポンスを想像していました。
実際にはアクセルの踏み込みに対してワンテンポ遅れて加速しますし、さらにワンテンポ遅れてエンジンが始動する感じです。
想像していたようなリニア感とはかなりかけ離れていましたが、これは女性や年配のユーザーに配慮して、あえて穏やかな設定にしていると思われます。
きっとNISMOバージョンはキレキレのダイレクト感になっているんでしょうね。
既存のエンジン車、ハイブリッド車から乗り換えても違和感を感じないセッティングですが、これを新世代の運転感覚とうたうのは少し無理があります。
フルスロットルした時の感触ですが、確かに早いことは早いのですが、レスポンスもまったりとしていますし、絶対的な加速力も2リッターターボ車には全く及びません。
このクルマの加速感に最も近い車種は、ディーゼル車のデミオXDと思います。
フル加速時には結構エンジン音も大きくなりますので、騒音レベルもデミオに近いかと思います。
2クラス上の静粛性などはありませんので、念のため。
このクルマに電気自動車の静かさを期待すると、肩透かしとなりますのでご注意下さい。
ですが、既存のコンポーネンツの組み合わせで、ここまで違和感なく仕上げてきたのは素晴らしいと思います。
トルクに乗った走りも、ストップアンドゴーの多い街中では楽に感じますね。
ただし、運転の楽しさ、高揚感はあまりありませんので、走り好きの方には響かないかと思います。
モーターによる加速感も最初は新鮮に感じるでしょうが、やはり純粋な内燃機関の楽しさには遠く及びませんねぇ。
走りの評価 (足まわりとボディ)
評価:★★
路面に対するあたりは柔らかく、一見上質な乗り味に感じられますが、注意深く観察すると常に細かいローリング、ピッチングが発生しています。
ハイブリッド化にあたってボディ補強が施されているようで、ボディ剛性は充分に感じられるのですが、サスペンションのダンパーか、プラットフォーム自体にあまりコストが掛けられていない印象を受けました。
トヨタ、スバル、スズキの新世代プラットフォーム群と比較すると古臭さを感じます。
トヨタもコンパクトカークラスのTNGAを開発中ですし、日産も気合を入れて新世代プラットフォームを開発しないと三日天下で終わってしまいそうです。
それでも、先代プリウスよりもボディ剛性、サスペンションの出来は上をいっていますが。
総合評価
評価:★★
価格も戦略的なものですし、実用車としては完成度が高いクルマですので、先代プリウスからの乗り換えであれば意義があるのではないでしょうか。
間違ってもフィットハイブリッドからは乗り換えないほうがいいかと思います。
フィットハイブリッドはまだ試乗していませんが、恐らくあちらのほうが出来は上でしょう。
僕的には、若干加速性能は劣りますが、バレーノのXSを買ったほうが、よほど幸せになれるかと思います。
ガソリン代の差額で埋め合わせできないほど車両本体の価格差がありますし、運転の実感、楽しさはバレーノのほうが上です。
ハイブリッド車全般に言えることなのですが、メーカーはエコだの環境にやさしいだのとうたっていますが、製造までも含めた考察では、大型RV車よりも環境負荷が大きいとの見解もあります。
車両本体の価格差を燃料代で埋め合わせることも、現実的には不可能です。
バッテリーの経年劣化による実用燃費の低下もあるでしょうね。
僕個人の見解ですが、現状で最も賢明なのは、燃費のいいエンジン車か、マイルドハイブリッド車を選択することではないかと思います。
それにしても、このクルマはなんでこんなに売れちゃってるんでしょうか?
僕には何のインパクトも感じられませんでした。
コメント
コメント一覧 (2件)
はじめまして。
現在ノート e power nismoの購入を検討しております。
レビューが客観的で非常に分かりやすく参考になりました。
僕も試乗しましたが、インテリアデザインのチープさが購入を留まらせてしまうんですよね…笑
ヨシキさん、はじめまして。
コメント頂いてありがとうございます!
ノート e-POWERは決してダメ車ではないと思うのですが、僕の主観では評論家諸氏が言うほどに素晴らしいクルマではないと感じました。
(購入予定なのにご無礼お許しください)
しかしながら、試乗したことは無いのですが、恐らくnismoバージョンはキレキレの走りに仕上がっているのではないかと想像します。
もしかすると、ノーマルとnismoでは走りの印象が全く違うかもしれませんね。
ただ、いくらnismoバージョンでも内装のチープさは隠しようもないかと思います。
もしよろしかったら、他社のクルマですが、フィットハイブリッドとスイフトストロングハイブリッドも是非試乗してみて下さい。
僕のイチオシです!