ND型ロードスターは、絶賛に値するか?
2015年5月にフルモデルチェンジとなりました、4代目ND型ロードスターを試乗してきました。
グレードは、「S Special Package」の6MTで、車両本体価格はちょうど270万円となります。
FRで専用シャシーのオープンカーではありますが、1.5リッターNAとしてはかなり高い値付けです。
時代も違いますが、初代が170万円でしたので、これでは若者に振り向いてもらうには厳しいでしょう。
原点回帰をうたうのであれば、この価格設定はありえません。
2リッターエンジン搭載の先代NC型と、ほぼ同額の価格設定は非常に疑問です。
排気量とボディサイズを縮小するのであれば、価格も下げないとダメでしょう。
初代のような、気軽に乗り回せるFRオープンカーを目指しているのか、プレミアムオープンを目指しているのか、いったいどちらなのでしょう?
僕にはコンセプトが明確でなく、ぼやけているようにしか感じられません。
僕が若かりし頃に発売された初代NA型ロードスターは、FR用の専用シャシーでありながら、お手頃な価格も相まって大ヒットモデルとなりました。
ボディサイズ、重量、エンジンパワーの設定が絶妙で、カリカリのスポーツ路線ではありませんでしたが、当時の若者は憧れたもんです。
路上で走っている姿を見ても、オシャレで、実に楽しそうでありました。
しかしながら、2代目のNB型、3代目のNC型となるにしたがって、日本国内での販売台数は減少の一途となっています。
初代から3代目までは試乗したことが無いのですが、ボディの肥大化と排気量アップ、それに伴う重量増加で、初代の軽快さが損なわれてしまったのが一因でしょう。
価格の大幅アップも要因でしょう。
このクルマを高級化、肥大化させてしまったのは間違った判断だったと思います。
初代のヒットの要因をキチンと総括していれば、こうはなってなかったことでしょう。
もはや現代は、初代の頃のように若者が競ってスポーツモデルを購入する状況ではありません。
現行の86やロードスターの購買層は、昔を懐かしむアラフォー、アラフィフ世代が中心のようです。
ですが、これは単に価値観の変化や時代の趨勢だけではないでしょう。
メーカー自身が、若者の自動車への関心を薄めさせてしまった側面も大きいです。
長らく、リーズナブルで走りが楽しいクルマが皆無でしたから。
今の若者が一番欲しいクルマはアクアだそうですね。
世も末です(笑)
このままでは、EVの時代になった時には、新興国の安いクルマに席巻されてしまいかねません。
もっともっと、価格面も含めて、若者に運転の楽しさを訴求しないと。
それゆえに、今回のND型を僕は評価していません。
評論家諸氏のインプレッションは絶賛の嵐だったように記憶していますが、
僕なりの主観満載でレポートさせていただきます。
外観デザイン
評価:★★
先代までのデザインは、初代のヒントとなったロータスエランの面影が感じられたのですが、今回のND型は、FR車らしいロングノーズショートデッキのプロポーションに、今どきのマツダ車のデザインアイデンティティーをちりばめたものになっています。
一見スポーティーでカッコ良く見えるのですが、「FRオープンはこうあるべき」との定石に縛られすぎているように感じます。
見惚れるようなカッコ良さが感じられず、所有欲が湧いてきません。
BMW Z4を意識しすぎているようにも思います。
初代のNA型は、間違いなくロータスエランがモチーフとなっていますが、エランのデザインをうまく現代風に昇華させた素晴らしいものだったと思います。
カッコ良さ、ポップな可愛さ、それにちょっとしたワルっぽさも兼ね備えていました。
対して、2代目のNB型のデザインは、僕は失敗作だったと思っています。
初代のテイストを踏襲しつつ、ボディサイド、フェンダー周りがボリューミーになっていましたが、全体を眺めると変に筋肉質でアンバランスな印象を受けました。
ヘッドライトのグラフィックはポップな感じを出したかったのでしょうが、突飛な違和感が感じられ、先代が持っていたカッコ良さもワルっぽさも影をひそめてしまいました。
3代目のNC型のデザインは、僕的には素晴らしく斬新でスポーティーに感じられました。
面構成は単純だったのですが、実にロードスターらしさが濃厚で、レベルの高いものであったと思います。
今回のND型は、フロントフェンダーやボディサイドの曲面はダイナミックで流麗なのですが、ヘッドライトやフロントバンパーのデザインが妙に平板に感じられますし、リアフェンダーのペコンとへこんだようなボリューム感の無さが、フロントセクションと整合性が取れていません。
さらにリアコンビネーションランプは、いままでのロードスターが守ってきたデザインアイデンティティを完全に捨て去ってしまいました。
あれが良かったのにもったいない事です。
おそらくこのデザインにはマッチしないと考えての事でしょう。
丸型テールランプを採用したデザインはフロントと整合性が取れていません。
リアがこうなるのであれば、フロントは丸目っぽくしないと。
細部のデザインレベルは高く感じられますが、全体の統一感が無く、ちぐはぐな感じを受けます。
その点、先代のほうが遥かに統一感が感じられました。
真正面のこの角度から見ると、ワイド&ローでシャープな印象を受けますが…
この角度からは、フロントバンパーが出っ歯のように見えます。
斜め上方から見ると、カッコ良く見えるのですが…
悪くないのですが、ヘッドライトのグラフィックがシャープすぎて単調です。
フロントフェンダーのダイナミックな造形にマッチしていません。
やはり、フロントバンパーがイケてません。
まるで、明石家さんま師匠のようです(笑)
横から見るとBMW Z4のようです。
先代まではボディサイドは直線基調で、それもロードスターらしさだったのですが。
やはり、Z4に似てますね。
ダッジバイパーのようにも見えます。
リアフェンダーの張りの無さはどういった意図でしょう??
まるで、しぼんだ風船のようです。
リアフェンダーをボリューミーな面にすると、鈍重になってしまうとの意図かもしれませんが、この凹んだようなデザインはいただけません。
リアのコンビネーションランプのデザインもダメです。
単純にカッコ良くありません。
真後ろから見ると、間寛平師匠のようです(笑)
内装
評価:★★
決してクオリティは低くないのですが、価格に見合った高級感はありません。
インパネは全面が硬質プラスチックですので、一部に合成皮革を使用している デミオ のほうが質感は上です。
デザインもスポーツカーらしい特別感、高揚感を感じさせてくれるものではありません。
色気もないですねぇ…
スポーツカーとしては、ハッキリ言ってイマイチです。
マツダの開発陣、どうしちゃったんですか?
FD型RX-7の頃とは大違いです。
こんな出来では、270万円もの大金は払えませんよ!
デミオの質感と同等か、下回っていると思います。
シートの出来も、特別印象に残るものではありませんでした。
ステアリング径が大きすぎますし、シャフトも細すぎでしょう。
実用車じゃないんですから、専用のステアリングを用意すべきです。
テレスコピック調整が出来ないのもマイナスポイントです。
空調周りの質感は、デミオと大差ないです。
ドアの内張りも、デミオと大差ない質感です。
この辺りもデミオと大差ない質感ですね…
内装に、ときめく要素が皆無でした。
質感は低くないですが、これではスポーツカー失格でしょう。
居住性、ユーティリティー
評価:★★
トランクスペースを除いては、S660 と実用性は大差ないでしょう。
さすがにトランクは、大人二人分の旅行カバンが余裕で入るだけのスペースは確保されてますので、S660 よりも実用性は高いです。
居住空間内には、センターコンソールの後ろに小物入れがあるだけです。
こちらは小さいポーチ程度しか入りません。
大人二人が余裕をもって過ごせるだけの居住性はあります。
幌を下げた状態でも、身長175cmで座高が高い(笑)僕でも頭上の空間には余裕がありました。
走りの評価 (エンジンとミッション)
評価:★★
搭載されているのは、1.5リッターの P5-VP[RS]型エンジンです。
デミオ の 15MB に搭載されている P5-VPS 型エンジンと基本設計は同じものでしょう。
ベースエンジンを高回転、高出力化したものですが、もともとがロングストロークエンジンですので、自然吸気のままでは大したパワーアップは出来ていません。
レギュラー仕様の フィット の1.5リッターエンジンに、馬力もトルクも負けてしまっているのは情けないですね。
高回転志向を貫くのであれば、ホンダのように可変バルブリフト機構を備えるべきでしょう。
マツダは可変バルブリフトに関してはノウハウが無いかと思いますので、内製ではなくサプライヤーの力を借りてでもそうするべきでした。
それか、スイフトスポーツ のように直噴ターボ化すべきであったと思います。
現状では、明確にパワー不足です。
フィーリング面では、圧縮比が高いチューンドエンジンのような、いい意味での荒々しさがありますし、エキゾーストノートも勇ましくスポーツカーらしさに溢れていますが、この動力性能はファミリーカーに毛が生えた程度のものです。
エンジンレスポンスも回転上りは鋭いのですが、回転落ちが遅く感じられました。
スイフトスポーツ よりも、圧倒的に遅いですし、低いギアで踏み込んでもスポーツカーらしいドラマは感じられません。
ミッションのフィーリングは、ソリッド感、ゲート感が明確に感じられ、スイフトスポーツ のような軽いフィーリングではなく重厚な操作感です。
スポーツカーにはふさわしいミッションフィールですが、この不足した動力性能にはそぐわないのではないでしょうか?
もう少し軽快な操作感でもよかったように思います。
走りの評価 (足まわりとボディ)
評価:★★
足周りは相当に固められています。
路面状態が良いところではハンドリングはリニアに感じられ、人車一体感が感じられるのですが、ちょっとした突起でも「ガツン」と突き上げが来ます。
大きな突起ではかなり揺すられ感があって、思わず身構えてしまうほどです。
これは、ダンパーの減衰力とスプリングレートを高めたチューニングカーのフィーリングです。
そのままサーキットも走れそうな設定ですが、その割にコーナリングにキレがありません。
シビックハッチバック や スイフトスポーツ のほうが旋回能力が高い(体感的に)様に感じられます。
実際にはコーナリング性能は高いと思いますが、フィーリング面でFRならではの優位性は感じられませんでした。
どちらかというと、スタビリティを重視しているのでしょうが、面白みのないハンドリングと感じられます。
実際の走行フィーリングは、動画をご覧ください。
僕のYouTubeチャンネル も、閲覧&チャンネル登録して頂けましたら幸いです。
総合評価
評価:★★
同じ俎上で比較するべきではないかもしれませんが、この価格であれば僕は シビックハッチバック の6速MT車をお勧めします。
もっとリーズナブルな価格で、スイフトスポーツ という最高に楽しいクルマもあります。
「FRオープン」という記号性にこだわりが無ければ、この価格だと他にもいいクルマはたくさんあります。
このND型ロードスターの目指した方向性が、僕には理解不能でした。
クルマとしてのクオリティは高いとは思いますが、開発スタッフはいったいどんなクルマを目指していたのでしょう?
このクルマ、運転していて楽しいですか?
「乗り心地が悪く、動力性能が不足したGT」と総括させていただきます。
コメント
コメント一覧 (14件)
コメント失礼します。
可変バルブリフト機構のノウハウはマツダに限らず他のメーカーも持っていますので採用しない理由が何か
通りすがりさん、コメント頂いてありがとうございます。
可変バルブリフトも直噴ターボも採用しなかったのは、おそらくコスト面と重量増を懸念しての事だと思います。
現状の動力性能であれば、乗り心地ももっと安楽に、ロールも許容するセッティングにして、気軽に乗れるオープンカーというコンセプトにしたほうが良かったのではないかと感じました。
足周りのスタビリティが高いが故に、動力性能の不足が目についてしまいます。
エラそうな事ばかり書かせていただいてますが、僕の嗜好に合わなかったというだけで、純粋なクルマとしての出来は高水準だと思います。
やまねこさん、こんにちは。久々にコメントさせていただきます。
現行のロードスターは悪いクルマではないのかもしれませんが、魅力を感じませんね。
私は歴代全てのロードスターを運転した事は無いのですが、個人的にはNA型のロードスターを超えるものは無いと思っています。
自動車メーカーのマツダが、NAロードスターのレストアサービスを始めたそうです。基本メニューが250万円から、エンジンOHを含むフルレストアが485万円だそうです。
私の好きなNAロードスターは、ナルディのステアリングとシフトノブ装備と、タン内装、専用のグリーン塗装の「Vスペシャル」が好きです。
あ さん、おひさしぶりです。
そうそう、そうですよ!
僕もまったく同じ考えです!
ちょっとびっくりしました。
僕もNAロードスターの「Vスペシャル」が最高にセンスがいいと思います。
まさに、現代版の「ロータスエラン」ではないでしょうか。
あれほどまでに小粋なセンスの良さを持ち合わせたクルマって、国産ではなかなか思い当たりません。
NDからは「小粋なカッコよさ」というものが感じられないのが、いま一つグッと来ない原因かもしれないですね。
ロードスターベースの「アバルト124スパイダー 」は1.4Lターボエンジンが積まれているので、可能であるなら乗り比べた方が良いかもしれません。
たしかに、アバルトはロードスターよりも足回りもソフトな設定のようですし、動力性能も格段に上ですので、不満が解消されているような気がします。
近くに試乗車が無いか探してみます。
さすがに無いかなぁ…
はじめまして。
現在NDロードスターに載っています。
さんま師匠のくだり…
確かにそう見える!(笑
そう見えるようになってしまった(´□`)
どうしてくれるんですかぁぁ
ヤマさん、はじめまして。
コメント頂いてありがとうございます。
ヤマさんはND乗りなんですね…
スミマセンっ!
シロウトのおっさんがエラそうなことばっかり書きまして。
昨日、初詣行ったときにローダウンのND見かけたんですが、いや、カッコいいんですよ。
BMW Z4よりもイイと思うんですが、なんだかロードスターのちょっと可愛らしいところが無くなっちゃったのがねぇ…
昨日はさんま師匠に見えませんでした(笑)
かなりローダウンされてたからでしょうか?
でも、真後ろから見ると寛平師匠に見えちゃったんです(笑)
ゴメンナサイ~
はじめまして。
最後のほうの言葉を取らせてもらうと、運転していて全く楽しくありません。
そもそもロードスターがスポーツカーだと思った事は無いですが、↓の方も書かれている通り、スポーツカーのフィーリングは皆無です。
https://hr-diary.com/roadster
何より、あの残念なATの出来じゃGTなんて到底呼べません。(図体を大きく、重くした軽オープンて感じ)
雰囲気だけを楽しむスポーティーカーとしてならまだ分からなくも無いですか、それならS660のほうが格段に楽しいです。
値段で比較すれば86ほうがコスパに優れていますし、なによりアフターパーツが豊富です。
絶対にロードスターがいい! という決め手が現行型にはありません。マツダに乗る時点で変わり者なので、決め手云々とか無くても関係無いのでしょうが。
最近ではフロントのデザインの悪さや貧相なエンジンに対する不満等も結構聞くようになりました。マツダ特有ですが、ネットの妄想じみた誇張表現に騙され、飽きられることが最近の販売不振に繋がっているのが実情です。
はじめまして。
コメント頂いてありがとうございます。
ご紹介いただいたブログも拝見しました。
プロの評論家のインプレは絶賛の嵐なんですが、僕と同じように感じている方もおられるのですね。
今回のロードスターの酷評記事に対して批判コメントがたくさん来るのかと思いましたが、そんなことはありませんでしたので、結構皆さん同じように感じておられるのかもしれません。
機械としての出来はいいのかもしれませんが、乗っていて楽しくないんですよねー。
そういえば、マツダの試乗記事って絶賛記事が多いように感じられますね。
僕はスイスポのほうが圧倒的に楽しく感じました。
S660は街乗りでも非常に楽しくてワクワクさせられました。
86はいまだに試乗していないんですが、非常に興味がありますので近いうちに試乗してこようと思っています。
このサイト大好きです。”走り”や”メカニズム”の”気になる点”が一緒で勉強になるし、ドツボです(笑)
過去に初代ロードスターを相棒にしてました。とても気に入っていたのですが、その後のロードスターにときめくこともなく3代目はちょっとカッコいいけど、も共感です(笑)
フィンチ&リースさん、コメント頂きましてありがとうございます。
お褒めのお言葉ありがとうございます。
初代ロードスターにお乗りだったんですね。
NA型は歴史に名を残す傑作車だと思いますが、ND型は…
デザイン的にもコンセプト的にも、もはやロードスターではありませんね。
こんにちは
最近NCからNDに乗り換えた者です
NC時代にはNA/NB乗りから散々叩かれましたので
NA原理主義者のND評というもの気になり、調べているうちにここへ行き着きました
内容、拝読させていただきました。NDはNAの商品コンセプトに立ち返ったとはいえ
所詮NAのレプリカではないので、この反応ある程度予想はしており、
案の定、という感じでしたが……残念です
とおりすがりさん、ご返信遅くなりまして申し訳ありません。
まあ、僕の好みの問題でもあるのですが、現行のNDはデザイン面でも走りの面でも、目を吊り上げてストイックに走る向きには好まれるでしょうが、初代のいい意味でのユルいフィーリングが全くなくなってしまったのが非常に残念だと思います。
NBあたりまでは、それが濃厚に感じられたんですが…
個人的な考えですが、ロードスターは我が道を行けばいいのであって、決してBMW Z4を目指してはイカンと思う次第です。