現代に蘇ったアルトワークスの実力は?
一年ちょっと前の2015年12月24日に発売されたアルトワークスは、以前から試乗したいと思っていたクルマです。
最近になって試乗車がだんだんと減ってきている様子でしたので、なんとか駆け込みで試乗させていただきました。
最後のアルトワークスが販売終了となったのが2000年12月ですので、なんと15年ぶりに「ワークス」の名が復活したことになります。
他メーカーも含めて、過給機付きのスポーツグレードが消滅して久しいですが、全盛期にはアルトワークス以外に思いつくだけでも、
・ミニカ ダンガン
・ミラ アバンツァート
・オプティ ビークス
・セルボ モード
・Kei ワークス
・ヴィヴィオ RX-R
などなど、ターボあり、スーパーチャージャーあり、4気筒4バルブは当たり前で、4気筒5バルブなどという常軌を逸したモノまであり、まさに百花繚乱状態でありました。
上記のなかで僕が運転した経験があるのは、シャレードデトマソの車検の時の代車の2代目ミラ TR-XX アバンツァートRだけです。
このクルマは直列4気筒DOHCのJB-JL型エンジンが凄まじくスポーティーだったと記憶しています。
レスポンスも素晴らしく、シュンシュンと絹のように滑らかに一気にレッドゾーン(8千5百回転)まで吹け上がりました。
絶対的な速さは別として、ワインディングロードを低いギアで高回転を維持しながら駆け抜けると、車内は「キュイーン」という滑らかで甲高いエキゾーストノートで満たされて、脳内麻薬がドバッと出たような高揚感が一気に沸き上がりました。
スポーツカーをかっ飛ばした経験がおありの方はお分かりいただけると思います。
あの独特の感覚が、この頃の軽ターボ車にはあったんです。
現代に蘇ったアルトワークスで、あの独特の感覚が味わえるのか?
それとも、なんちゃってワークスなのか?
実力を確かめるべく全開試乗してまいりました。
外観デザイン
評価:★★★
おそらく初代アルトをイメージしたデザインかと思います。
全体的には、よくまとまったデザインと感じられますが、僕にはギョッとするようなフロントフェイスのインパクトに違和感を感じてしまいます。
どうしても、カッコよさやオシャレさが感じられないんです。
アルトワークスとしてのワイルドな感じは表現できていると思うのですが…
どうしても標準モデルをベースとしなくてはなりませんので限界がありますね。
どうでしょう。
いっそアルトワークス専用デザインとして、メガネガーニッシュとヘッドライトカバーを無くしてヘッドライトをむき出しにしてみては?
なんだか凄くカッコよくなりそうな予感がします。
僕みたいな中年オヤジが乗るには、少し恥ずかしい感じがします。
ヤンチャで子供っぽい感じがしてしまうんです。
ボンネットも、もう少し低く抑えたいところですが…
メガネガーニッシュ無しだと印象が変わるかもしれません。
サイドビューは伸びやかで、カッコいいと感じられます。
ボンネットからのウエストラインがあと5センチ低かったら、もっと伸びやかでスタイリッシュになっていたことでしょう。
低く見せる目的のプレスラインが入ってはいるのですが。
Cピラー周りも、彫りの深い凝ったデザインです。
リアビューはワークスらしい迫力があって、カッコいいと思います。
内装
評価:★★★
廉価版の軽自動車がベースですので、さすがに質感は高くないです。
インパネ周りもプラスティッキーですし、各部スイッチのクリック感も上質さはありません。
ですが、上質さや高級感を売りにするクルマではありませんので、これで必要充分です。
星2つが妥当かと思いますが、標準のレカロシートが想像以上に上質なものでしたので、星3つとさせていただきます。
このクルマは上質さや高級感ではなく、走りにかかわる機能面にコストが割かれているようです。
その割り切りは非常に正しい判断だと思います。
メーターもシンプルですが、視認性は良好です。
ハンドル径はもう少し小さいほうがこのクルマの性格に合っているかと思います。
コスト面で難しいでしょうが、テレスコピック調整も出来てほしいところです。
このレカロシートだけでも、RSとの差額分以上の価値があります。
レカロとしてはマイルドなほうですが、非常にホールド性が良いです。
シフトノブの握り心地、シフトフィールは充分に節度感があって、軽自動車とは思えない質感でした。
インパネは軽自動車としては標準的な質感でしょうか。
居住性、ユーティリティー
評価:★★
基本的には、暑苦しい漢が一人で乗るクルマですので、後席とトランクのユーティリティは重要ではありません。
後ろ半分は荷物置き場と考えれば、広大なスペースがあります。
リアシートの背もたれを倒せば、更に広大な荷室となります。
足元スペースは広いですが、リアシートは背もたれも立っていますし、緊急用と考えたほうがよさそうです。
トランクスペースは想像していたよりも広かったです。
走りの評価 (エンジンとミッション)
評価:★★★★★
エンジンの回転フィールは軽自動車の3気筒としてはスムースなほうです。
ですが、ブリッピングにおいては音質は若干ガサツに感じられ、音量自体も大きいと思いました。
新型スイフトのK10C型3気筒エンジンとの比較では、上質さや高級感では全く勝負になりません。
是非動画もご覧ください。
僕のYouTubeチャンネル も、閲覧&チャンネル登録して頂けましたら幸いです。
ですが…
テストコースでギアを1速にぶち込んで、思いっきりアクセルを踏み込んだ瞬間!
上質感?高級感?
そんなものはどうでもよくなりました。
「ギュイーン」という加給音も混ざった盛大なエキゾーストノートを響かせて、瞬時にレッドゾーンまでフケ上がり、強烈な加速にアドレナリンが噴出しました。
2速にぶち込んでも、レッドゾーンまで一気呵成にフケ上がります。
思わず「楽しぃー!」と叫んでしまいました。
恐らく加速タイムを計測したら新型スイフトのRStとあまり変わらないでしょう。
ですが、体感的にはアルトワークスのほうが数段早く感じられます。
決して安定感が無いからではないのですが、何故なんでしょうね。
トラクションコントロールが付いていますので、ホイールスピンしませんし、ボディ剛性が充分に高いのでしょう、1速、2速のフル加速時にもトルクステアは一切ありませんでした。
むしろ安定感、安心感は充分にあります。
僕が運転経験のある2代目ミラ TR-XX アバンツァートRの4気筒エンジンの「キュイーン」というフィーリングとは違って、「グワァーン」といった感じなのですが、これはこれで非常に楽しくて気持ちのいいものです。
ちなみにですが、2代目ミラも体感的には相当に早かったのですが、このアルトワークスは更に上をいっています。
「本当に64馬力?」
そう思ってしまうような強烈な加速感でした。
ミッションも節度感があって、スコスコと気持ちよくギアチェンジできるものでした。
素早いシフトチェンジでも、ギア鳴りは一切無かったことをご報告させていただきます。
このエンジンとミッションの組み合わせは楽しすぎます!
文句なしの星5つです。
走りの評価 (足まわりとボディ)
評価:★★★★
硬い!これは素の状態でチューニングカー並みの硬さです。
路面状況のいい道でも、ちょっとした段差でビシバシと突き上げが来ます。
もちろん現代のクルマですので、突き上げのカドは丸められていますが、ホンダのタイプRやフォルクスワーゲンのR32並みの硬さです。
先代のスイフトスポーツよりは間違いなく硬いです。
ここまでの硬さでも跳ねるような感じは一切なくて、大きな段差でもしっかりと路面にグリップしているところは素晴らしいと思います。
ボディが軋んだりするような感触も一切感じられませんでした。
このクルマのボディ剛性はかなり高いです。
これほどまでにボディ、足回りの剛性感がありながら、リアサスのトーションビームの悪癖が一切感じられない点も素晴らしく感じられました。
リアサスが半独立でありながら、4輪独立サスペンションのようなフィーリングです。
やはりスズキのトーションビームの使いこなしは素晴らしいと感心させられます。
この驚異の剛性ゆえ、コーナーでも殆どロールを感じずにクイッと機敏に曲がります。
この軽快なフィーリングは、昔に所有していたシャレードデトマソを彷彿とさせるものがあります。
ハンドリングもリニアで、ステアリングインフォメーションも濃厚です。
運転の実感が感じられて、とにかく楽しい!
しかしまあ、独りで楽しむ分には最高のクルマですが、カップルや子供のいない夫婦がファーストカーとして買ってしまうと破局の原因になりかねません。
僕もこのクルマの助手席や後部座席に乗せられるのは、かなり抵抗があります。
ご購入を検討されている方は、実際に試乗してみて乗り心地を確認されることを強くお勧めいたします。
この高剛性のままで、もう少しのしなやかさがあれば星5つの満点なのですが。
ですが、不毛な燃費競争一色の現状で、これほどまでにとんがった、走りに特化したクルマを発売してくれたスズキは素晴らしい会社だと思います。
ホンダも400万超えのシビックタイプRなんか発売せずに、フィットタイプRを出してくださいよー。
総合評価
評価:★★★★
何のトゲもない、フニャフニャの草食男子のようなクルマが跋扈する現代に、これほどまでに毒のあるとんがったクルマは他に見当たりません。
何百馬力もあるようなハイパフォーマンスカーも、日本の公道では持て余してフラストレーションが溜まるだけでしょう。
このアルトワークスは、この日本国内においては最高のスポーツカーと言えなくもありません。
64馬力の呪縛を外して、80馬力仕様で海外で発売したら大人気になるような気もしますね。
かなりエンジンを回し気味で走っても、リッター15kmほどは走るようですし、おまけにレギュラー仕様ですのでガソリン代も気にせずに思う存分に踏み込めます。
毎年の税金も安いです。
若かりし日にブイブイいわしていた、元走り屋の中年オヤジにはかなりツボにはまるクルマです。
もちろん若いヤンチャなお兄ちゃんやお姉ちゃんにもピッタリでしょう。
万人にお勧めできるクルマではありませんので星4つとさせていただきますが、僕もかなり真剣に欲しくなりました。
このクルマを買ったら10歳ぐらい若返りそうですねぇ。
追記:
同じ日に5AGS版も試乗させていただいたのですが、このミッションは、今までに僕が運転経験のあるシングルクラッチAMTのなかでは断トツの出来栄えでした。
自家用車の2代目トゥインゴのミッションとは比べ物にならない完成度です。
シフトショックが少なく、変速時の駆動力抜けをほぼ感じさせないほどの素早い変速スピードで、こちらを選んでもトルコン式やCVTでは得られないダイレクト感を存分に味わうことが出来ます。
これほどの出来ならば、現行スイフトのRS系も、CVTから5AGSに変更してもいいのではないでしょうか。
コメント
コメント一覧 (4件)
今日向島でお会いした大っきい方です!
また、釣果情報教えてください(^^)
おおおぉぉー!
コメントしてくれたんですね!
ありがとうございますっ!!
(^O^)/
当ブログの記念すべき初コメントっすよ!
うれしぃー!
僕の名前は岡本雄大(おかもとたけひろ)って言います。
48歳のおっさんです。
ぜひ仲良くしてくださいね。
あっ、ちなみに昨日は高砂港に移動して5時くらいまで粘ったんですが…
ボーズでした…
はじめまして とても車にお詳しい方と思い 楽しく拝見させていただきました
私は今度転職するのですが 社用車通勤でしたので 今度自分の車を買おうと思いますが アルトとミライースで悩んでおります ミライースの方は拝見しましたし 先代の方も乗っておりましたので よろしかったらアルトの方のコメントあればよろしくお願いします
がーゴンさん、はじめまして。
コメント頂いてありがとうございます。
アルトのノーマルグレードは残念ながら試乗経験が無いんです…
県内に2店舗しか試乗車が無くて断念しました。
アルトワークスとラパンの試乗経験からの推測ですが、恐らく運転の楽しさと走りの質感ではミライースよりもアルトのほうが明確に上だと思います。
どうしてもミライースでないといけない事情が無い限りは、個人的にはアルトのほうを強くお勧めします。
個人の主観もありますので、可能であれば是非比較試乗してみて下さいね。